「簡単な会話ができるようになる」を目標に、子どもに英会話を習わせたけれど、中々できるようにならない。それで辞めてしまったという方が、子どもだけでなく大人も相当数いらっしゃるのではないかと思います。
大きな理由の一つは、「英語で質問する力」がないことがあります。会話は質問する立場にもなり得るのですが、恐らくどちらかというと質問に答えることの方を重視しがちだからだと考えています。尋ねられたことには応えられるけれど、自らが質問できない場合、会話は弾まないこともあるでしょうし、途切れてしまうことさえあるかもしれません。
質問力をつけるためにはそれなりの知識も必要です。「それなりの」というのは曜日、月、数字、と言った日常生活に欠かせない単語や英語の根本を支えるほど大事な文法などです。これらのことを理解できずに「会話教室に通うことで簡単な会話ができるようになる」と考えていたらそれは現実的ではありません。
一方で、日本語やその他の母語であってもそもそも他人に質問をすること自体が苦手なこともあるかもしれません。
簡単な英会話を習得できるように、カギとなる英語で「質問」する力のつけ方を詳しく見ていきましょう。
簡単な会話って?
ところで「簡単な」会話ってどういうことを指すのでしょうか。
旅行に行った時に現地の人とやり取りするための会話、ということであれば、質問をすることやされることを場面に応じて予め想定し、数を絞って練習することができます。税関を通る時、買い物の時、ホテルのチェックインの時、など内容は簡単ではないものも含まれると思えるので、決して簡単な会話とは言えません。とはいえ、暗記する想定会話数が多くないのでならば、時間も多くかからず作業自体も簡単なのかもしれません。
一方で教室に通われる方の多くは、旅行目的ではないケースが多いです。その場合「簡単な会話」とは「ネイティブの先生の指示や質問が理解できる」こと、もう一歩踏み込んでその「質問や指示に対して返事ができること」と捉える人が多いようです。確かに「質問に答える」ことでの達成感は得られるし、嬉しいですよね。でも、これを繰り返しても「簡単な会話」ができるようになった自覚を持てないと思います。
これはなぜなのでしょうか?質問に対して答えでいるだけで「簡単な会話」が成立していないからです。キャッチボールで言えば、ボールを投げるのを受け止めているだけで、自らボールを投げること、投げ返すことをしていない状況と同じだからです。例えば
- 「お腹空いた?」と尋ねられ
- 「空いてる!」という返事までたどり着いた
この先何を言ったらわからず沈黙が続くと気まずい空気が流れ、取り繕うために笑ってごまかすしかなくなります。この作り笑いこそが日本人の笑顔がナゾだと言われる理由で「お腹空いてんのに、何笑ってんねん?」みたいに外国人は思うわけです💦。雰囲気悪くしないように最大限の努力をしているのに!!!
「質問に答える」だけでは会話が上達したと自覚できないのいは、作り笑いに頼ったり、それによって誤解されたりすることもあるわけです。この「質問に答える」段階から「簡単な会話ができる」にようになるには、質問に答えた後、追加で一文加えることから始めてみることがおすすめです。二つ例を挙げます。
- 「お腹空いた?」
- 「空いてる!」+「あなたは?」
- 「お腹空いた?」
- 「空いてる!」+「私は中華料理が好きです。」「あなたは何が好き?」
この太字で示した文があることで「簡単な会話」が達成できるのです。まずは一つ目の一文を追加することから取り組むといいでしょう。よりレベルが上がると、質問される前にその後に続く会話を想像したり、楽しむために「自ら質問をする」とことにチャレンジしましょう。
「簡単な会話」には、この「自ら質問する」ことに意識を向けることが大事なのです。この「質問する」ことになぜ意識が向かないのか?その原因を解明し簡単な会話をマスターすべく、会話の成り立ちを押さえてきましょう。
なお、これからお話する「簡単な会話」とは、「通りすがりの初対面の人と3~4往復の会話が続く」程度のものと考えてください。
会話の成り立ち
会話は質疑応答によって成り立っていることを私たちはあまり意識せずに母語を使っていると思います。
「質問をすることなく、一日過ごせますか?」
ひたすら返事をするだけ、あるいは発信するだけという状態です。これは時には相手の反応や都合を度外視している非現実的な場面だと思います。私たちの日常は、相手の立場を配慮した上での質問から成り立っています。
子どもは小さいうちから一日中周りの大人に質問を繰り返すことで成長していくし、親は子どもの学校や習い事での様子を毎日繰り返し尋ねるでしょう。仕事でよく聞くキャッチフレーズ「ホウ・レン・ソウ」のソウに当たる「相談」では質問が必須です。
英語を教える立場からしても、生徒たちに質問をする、生徒が答える、の繰り返しによって学習が進みますが、この繰り返されるプロセスにおいて学習内容の理解が一層深まったりするのです。この点からも会話は質問によってこそ成り立ち、「質問すること」の重要性に気づかされます。
自身を振り返ると、ものごとを教える師業は、生徒たちに質問をすることで仕事が成り立っていることにも気づかされます。
私たちの日常が質問なくして成り立たないことに思い至ったのではないでしょうか。
質問ってそんなに難しいの?
質問って大切ですが、タイミング、尋ね方、質問愛用とか、案外母語でも簡単ではないですよね。それが英語ならなおさら難しいでしょう。ただし、今回は「簡単な会話」に焦点を当てているので、簡単な会話における質問ができないもう少し初歩的な理由について考えていきます。
初めての生徒さんに最初の時点でレベル確認をさせていただきます。基本的には1対1で個室のような部屋の中で実施します。確認内容は大まかに以下のことです。
- イラストやつづりを見えて英単語を答えてもらう
- リスニング音源をかけて聴きとってもらう
- 私からの英語の質問に答えてもらう
- どんなことでも良いので、英語で適当な質問文を作ってもらう(場合によっては絵カードを使用)
1~3までは正解・不正解は関係なく何らかの反応ができます。ところが、4.質問をしてもらうという段になると、次のような反応になるケースの多いのです。
- (どのような質問をしたら良いのかわからず)首をかしげる
- (そんなことを尋ねられたことがないのか?)目を白黒させる
- (理由は全くなぞの)沈黙が続いて、固まる
特に子どもは英語で質問を発することのできるケースが少ないです。お助けツールの絵カードには何匹かの動物、食べ物、海などが描かれたものを使うのですが、それに関する質問でも良いよ!と言っても同じ反応なので最初は驚きました。大人もだんまりが続くことは少数ではありません。
このようなケースにおいて、または単に「簡単な会話」での質問の例を挙げてみます。
- Are you happy?
- Do you like English?
- Is this a monkey?(絵カード使用)
- How are you? / How many pencils?
- What ‘s this? (絵カード使用) / What time is it?
- When is your birthday?
- Where is the monkey?(絵カード使用) / Where do you live?
意外と難しい?いやいや、楽勝?これらは中学1年生の2学期までの学習内容です。小学生や場合によっては幼稚園以下のお子さんでもお教室に3年ほど通われていたら半分以上は学習される内容だと思います。では、言われた見たら「そうだよね!」というこれらの簡単な質問がなぜできないのか、その理由を考えていきましょう。
- 質問や発言することに慣れていない
- 質問をする練習をしていない
- 練習はしているものの、実際に使う状況・場面がわからない
このように外国語を学習する際には、質問に答えるより、質問をすることの方が難しいのです。最初に相手からのアクションがあればそれに反応するだけでよいし、例え間違えても、もう一度質問しなおしてくれることもあるし、大きな間違いでなければ理解してもらえることも多いでしょう。
ところが、何もないところから自ら発信する場合は、間違えたら相手も困るかもしれないとか、理解してもらえなかったらどうしようとか、慣れないと難しいのだと理解するようになりました。
それでは英語で「簡単な会話」の基礎となる「質問」力をつけるにはどうしたらいいか、何が必要なのか、英語で質問できないと思われる3つの理由とともにお話していきます。
質疑と応答をセットで練習
質問の力をつけるために、疑問文ばかり練習すればいいわけではありません。会話の構成要素である疑問文と、もう片方の返答文両方をペアで練習することが大事です。
- 疑問文
- 答え
この二つをセットにしてた反復練習、案外忘れられていたりします。これをセットで練習すると自ら質問を発した際に返答の想定がある程度できるようになるし、質問に対して自信をもって答えられるようにもなります。
それでは、質問が苦手な3つの理由のうち1つ目の「質問や発言することに慣れていない」場合、どうしたらいいのでしょうか。次にお話します。
母語の文化も影響している?
質問や発言は、個性とも関わってくることなので、自身やお子さんの性格や特徴、コミュニケーションをとる時の傾向を把握しておくことが大切です。参考までに日本人が外国と比べた時、コミュニケーションにおいてどのような傾向があるのかを紹介します。
ニュージーランドに留学した際「日本人は大人しい」とよく耳にしました。確かに積極的に質問をしたり、一旦発言し出したら止まらない、という外国人はいましたが、日本人はそこに該当することはありませんでした。
日本人の中には先生やクラスメートから質問されない限り答えず、質問されても答えることすらしないという場面もありました。先生はその生徒に「質問の意味がわからないの?」「答えは間違っていてもいいのよ」などと声をかけていましたが、それでも一向に返事をしないのです。
これは日本文化や日本人の傾向も関係しているとも思います。教育現場では教師が一方的に話をしていて、生徒達は受動的に授業を聴いているのが多数派で、生徒自らが発信する型の授業スタイルは少数派です。クラスの前では答えを間違えることを恐れる傾向もあります。このような教育環境で育った若い世代が海外に出たら、日本の授業のイメージで海外の授業を受けるわけで、先ほどの反応は不思議ではありません。
私が中学校で教えていた際は、授業中に生徒に疑問点がないかを尋ねると、クラスによっては無言だったり同じ生徒しか質問しない、ということもありました。試験前の期間は昼休みがなくなるほど職員室に質問に来てくれるのですが(笑)
ところがこの「発言しない」というのは諸外国から見たら何を考えているかわからず、日本人はクラスの輪は乱さないものの扱いにくい、という印象を先生方や場合によってはクラスメートにも与えてしまうようです。
でも、私の教育現場での経験から、大勢の前は難しいけれど、1対1ならば質問はしやすいという傾向はあります。その場合、まずはプライベートレッスンなどで英語での質問に慣れていくことから始めると良いかもしれません。
日本人のもう一つの傾向は、初対面の人に対して気軽に話しかけたり、質問したりすることも難しいことです。日本語でも難しければ英語ではなおさらです。スマホやネットの発達によって対面での会話の機会が激減しているように思いますから、意識して色々な人と会話することも大事だなと感じます。
日本人にも例外はあって、いわゆる「大阪のおばちゃん」です。初対面の人に気軽に話しかけるし、世話好きだし、堂々としているし、大阪のおばちゃんが海外に留学したら平気で関西弁しゃべっているかもしれません。母語であっても「大阪のおばちゃん」の意識をもって初対面の人と気楽に話ができれば、案外英語で「質問」する力がついてくるかもしれません。
大阪のおばちゃんは嫌だって??確かにそうかもしれませんね(笑)単にイメージですから、英語を話す場合には気後れしないことが大事だということです!ちなみにニュージーランド留学時代に私が先生から言われたのは「あなたは日本人じゃない、中身はアメリカ人だ」ということでした。どの側面をもってそう言われたのかは未だに謎です(笑)
具体的な練習法…答えからの類推?
次に「英語で質問することが難しい理由」の2つ目「質問をする練習をしていない」場合の練習法をお話します。ひたすら質疑応答を繰り返す単調な作業を思い浮かぶかもしれません。これはストイックな人には向いているかもしれませんが、そうでない人、まして子どもはすぐに飽きてしまいます。色々な練習法がありますが私の気に入っているものをご紹介します。
質疑応答一組での音読練習を5~10セット程度終えたら、質問文を隠し、答えの文だけを見て質問を類推するのです。ノートに書いてしまうと順番がいつも同じなので、出来ればカードのようなものを利用すると良いでしょう。片面は疑問文、裏面は返答文というカードです。
これを5~10セット答えの面を上にして疑問文を類推。一巡したら、カードの順番を変えるように混ぜて、また一巡。類推できないものがだんだん絞られてきたら、それを数日間繰り返してもいいでしょう。返答文だけでは質問が容易に類推できない場合場合は、推測しやすいような返答文に変えていくなど、工夫をしてみてください。
例えば
- 質問:”Are you hungry?” (お腹空いている?)
- 答え:”No, I’m not. I’m full.” (いいえ。お腹いっぱいです。)←疑問文が推測しやすい応答文
と二文にすることで、答えの文を見ただけで質問文が推測しやすくなります。また、初対面の人との会話をイメージした返答集もオリジナルで作るのも楽しいでしょう。どこで出会う人なのか、年齢はどれくらいなのか、性別は、など。子どもには難しいかもしれませんが、毎回異なる先生とオンラインレッスンに取り組むことでイメージが湧いてくるかもしれません。
もう一つは、質問文と答えの文を、単語ごとに紙片に書いてバラバラにします。それを並べ替えて質疑応答の二文または三文を完成させるのです。紙片は、名刺の半分くらい~一回り小さいくらいのサイズで良いと思います。紙片のサイズが大きい場合、完成させた文が結構長~くなってしまいます!!
「簡単な会話」練習は文章暗記では終わらない
さて、質疑応答をセットにした具体的な練習方法をお話したので、「これで英語で「簡単な会話」ができるようになる!」「ヨシ練習だ!」と思っている方!実はもう少し必要なものがあるんです。
それは「簡単な」語彙を網羅する必要があることです。「簡単な語彙数の目安は何語か?」人それぞれでしょうが、個人的には最低1,000語は必要だと思っています。大人の場合は1,500語は必要かもしれません。根拠は二つあります。
一つ目は人気の高いネイティブの子供向け(5~7歳)英英辞書の収録語数が1,000語だからです。実際の収録語数は3,000語なのですが、派生語(語源が同じ単語)などを含めると実質的に1,000語と換算できるのです。説明にも双方の数字が記載・説明されています(AmazonUSAのMerriam-Webster’s First Dictionaryより。)
次に文部科学省が提示している※学習指導要領が指定してきた学習すべき単語数の推移を以下のグラフで見てみましょう。
「学習指導要領」とは、全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう、
文部科学省HPより
文部科学省が定めている教育課程(カリキュラム)の基準です。
およそ10年に1度、改訂しています。
子供たちの教科書や時間割は、これを基に作られています。
文科省が定めた語数に合わせて教科書会社は単語選定をし掲載内容を制作しています。引いてはこれが入試問題にも大きく関わってくるため受験生にとっては大事な指標だとも言えます。以上の図からわかることで、特筆すべきことをまとめます。
- 2019年までの過去30年、小学校については英語の定めが一切なかったが、2020年の改定から学習単語数が700語近くと定められた
- 同様に過去30年、以前は中高合わせた総英単語数の定め3,000語前後から、2020年の改定では3,400~4,300と大幅増に転じた
ここで言いたいことは、今回の改定はかなり大きな変更ですよ、ということではありません。英語導入期に文科省が定めている学習語数です。30年前までは中学3年間で1,000語前後、2020年からは導入期が小学校に移ったため、1,000語には満たないものの、700語と相当数あることです。
以上が、「簡単な会話」を実現させるための必須単語数が1,000語と私が考える根拠です。
- アメリカの子供向け辞書
- 日本の文科省指定導入期の学習語数
質疑応答の文章を憶えるだけでは、単語数は1,000語に届きません。文章を丸覚えしても、応用が利かなければモッタイナイ!!
例を挙げます。Do you like dogs? No, I don’t. I like cats. という会話文を丸暗記していたとします。その状態でバス停で、一緒に待つことになった二つのケースを考えます。
- 本を読んでいる初老の女性
- バイオリンケースを持っている女の子
それぞれに対し、質問するとしたら
- Do you like books?
- Do you like music?
であり、逆はあり得ません。いくら暗記していて簡単に口から出ると言っても、例文
“Do you like dogs?”
はましておかしなことになります。このように単語力がないと応用が利かずせっかくの努力も実践できない可能性が出てしまうのです。ちなみに、この例は3つとも語彙も文法も中1レベルです。
「簡単な会話」練習の土台…やっぱりアレも必要です
英語の「簡単な会話力」のために語彙力がある程度語必要なことはお話しましたが、最後にあと一つ必要なものをお話します。それは「文法力」です。
確かに質疑応答と語彙力を強化することで、簡単な会話は最低限何とかなります!最低限と言うのは、意思疎通を取るのにはOK、でも正確ではない場合もある、一言発した途端、外国人だとバレちゃうレベルです。バレること自体は問題ありません。先ほどのバス停のケースは中1レベルで外国人とバレちゃう?レベルですが、同じシナリオで、ほぼ同内容の質問を中2レベルの語彙と文法を使うとどのようになるのか、見ていきます。
- Do you enjoy reading?(読むことを楽しんでいますか?)
- Do you enjoy playing the violin?(バイオリンを弾くことを楽しんでいますか?)
ちょっと難易度が上がるように見えますが、中2レベルです。文法理解しないまま暗記に頼る場合、会話に自信や確信が持てないこともあるし、文法力があることで同じ会話にも深みが出ます。先述の例と質問内容はほぼ同じですが、文法力によって応用を利かせられることがお分かりいただけたでしょうか。
文法理解した上での練習は会話の正確性をあげ、記憶も定着しやくなります。記憶は様々な分野からのアプローチがあった方が忘れにくいからです。また正確な英語を使うことで、外国人(ネイティブ・ノンネイティブ関係なく)から信用してもらえることもあるかもしれません。
「えぇー子どもに文法??」「文法理解が難しいから「会話」教室に通っているのに!」そう思われるのはご最もなお話です。でも小学校に上がると、低学年の子どもでも「英語は日本語と語順が異なる」「動詞が2種類ある」など大まかな理解をし、認識することができます。
例を挙げると、”ride a bike” を日本語と語順が逆だという説明のもとで教えたとします。この理解が定着すると「本を読む」「木に登る」の英語表現が以下のようになる、つまり自然に語順を並べかえられるようになるのです。
- ✕ a book read → ○ read a book
- ✕ a tree climb → ○ climb a tree
時間がかかることは全く問題ありません。文法で大切なことに取り組むことから始めてみませんか。この理解のもと反復練習することで、質問をする際だけでなく答える際も自信を持ち、確実に応用が利くようになっていくのです!
文法力は今は求めない、英語で「簡単な会話」を実践することの方が大事、という方はこの先は飛ばしていただいて差し支えありません。でも、簡単な会話でもやっぱり正確な文法力があった方がいいよね、という方は次をお読みください。
文法力がないとどうなる??
文法力がないとどうなるのでしょうか。語彙・文法ともに中1レベルの英語の会話文を例に、生徒たちの間違い例を紹介します。これらに共通することは、頻度が高いこと、文法を理解していないことです。基本的に意思疎通に大きな問題はないものの、ネイティブスピーカーはまず間違えないものです。誤りにはピンクで色を塗っています。
ケース1(2種類の動詞の違いを使い分けできない)
- 質問:”Do you like sushi?”
- 答え:”Yes, I am.” → ○ Yes, I do.
ケース2(主語を捉えきれておらず、単語だけで判断してしまうケース)
- 質問:”Is this your pen?”
- 答え:”Yes, I am.” → ○ Yes, it is.
これは特に子どもに顕著にみられる間違いで、質問に対し何でも”Yes, I am.”とパブロフの犬のように無条件反射的に答えてしまう傾向があることにある時から気づきました。残念なことに、英語教室に年単位で通っているお子さんほどこのような傾向が強く、中高生以上の年齢でもこのことが珍しくないことです。
とはいえ、このような間違いをしたとしても、意思疎通に著しく影響を及ぼしません。英語で「簡単」な会話をする=「意思疎通がだいたいとれる」と捉えてしまうと、上に挙げた例のような文法ミスの英語が定着してしまう可能性が出てきます。
間違いのクセがついてしまうと、どこかのタイミングでそれを直さなければならないことが起こります。中1レべルの文法は英文の土台であり、それを直すことは場合によっては今までのクセを全てを直すことにつながり得るます。クセがついた後で正しい文法で「簡単な会話」を達成しようとすると、かなり大変な作業が待っていることがお分かりいただけるでしょうか。
独学?オンライン?対面?
最後に、英語で質問することが難しい理由の3つ目「練習はしているものの、実際に使う状況・場面がわからない」場合についての対策をお話します。この場合は、練習を十分した上で対面レッスンで実践の場を経験することをおすすめします。安くて充実しているオンラインの英会話サービスも多様にあるのでそれを活用することもアリだと思います。
英会話を、英会話教室にもオンラインレッスンも使うことなく、独学で習得して、検定試験のスピーキング分野で満点近く出した、という人のwebページを読んだことがあります。その方法を編み出したこともすごいし、それを継続できることもすごいと心から感心します。
会話勉強の目的がスピーキングテストである場合は独学も可能ですが、今回のテーマである「簡単な英会話」からは話が逸れてしまうので別の機会に譲りますね。
オンラインサービスも良いのですが、対面レッスンの補助としてなさると効果があると思います。人類の長い歴史を見ても会話は対面でしてきたものだし、相手と対面することで得られる非言語情報がコミュニケーションの8~9割ということはよく知られた話だからです。私もオンラインレッスンをさせてもらっていますが、画面上では細かい情報がお互い伝わりづらく、対面に比べるともどかしさがあるのです。
どのような形態を選んでも、大事なのは練習してきたことを試す「実践の場」があることです。
先ほど質問練習方法として紹介させてもらったカードを使った二つの活動は大事ですが、実際に相手と会話した時にはカード活動通りには行かず、応用が必要だとわかるからです。練習通りにはいかない場合、応用力をつけるために必要なモノ(語彙力・文法力)が見えてくることもあれば、実践の場で見つかった新たな課題(表現力など)も見えてくることもあるのです。
まとめ
今回は初対面の人と英語で3~4往復程度の会話をすることを「簡単な英会話」と定義して話をさせてもらいました。ここまでその「簡単な英会話」が子ども・大人限らず実は簡単には達成できないこと、その理由、達成のために必要な語彙力・文法力とその理由、また文法力を疎かにすると何が起きるかをお話しました。まとめます。
- 会話のカギは英語で「質問」する力を養うこと
- 母語で質問や発信する力も必要
- 英語の質問力を下支えする「語彙力」と「文法力」
- お薦めの練習法~カードを使おう!~
- 対面練習という「実践の場」が必要
上述どれも大切ですが何よりも「反復練習」なしには達成できません。英語教室へ週1回する”だけ”で達成できることではまずあり得ません。週に1回の通学だけで達成しようとしたら残りの人生全てかけても恐らく達成不可能です。
その理由は今までのお話の内容からお分かりになるでしょう。「簡単な英会話習得」といっても年齢に関係なく頻度が重要です。そして初対面の人に「質問をする」というイメージをもつ際、色々な人物像をイメージすることで質疑応答のバリエーションも増え、モチベーションをあげられるかもしれません。
このような取り組みは、実は脳トレにもなります!よろしければ老化防止の観点からも試してみてください(笑)
達成することは「簡単」ではないけれど自信をもって「簡単な英会話」を楽しめますように!!
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