ジェンダーギャップの課題の本質は?ニュージーランド女性首相の辞任理由から考える。

Jacinda Ardern after the terror attack 国内外での生活
Jacinda Ardern after the terror attack

2023年1月19日、ニュージーランドの女性首相、ジャシンダ・アーダーンは2月7日をもって辞任を発表、世界中から注目を浴び、大きな話題となりました。

辞めることになった理由は?決断するまでの苦悩はいかばかりだったのか?

国民も驚いたはず。私も、すごーく気になる。

政治世界から離れている自分には想像も及ばぬこととはいえ、SNSでの誹謗中傷が主たる理由ではないかという説を支持する私としては、数ヶ月経ってもモヤモヤしています。

そんな中迎えた3月8日「国際女性デー」。この言葉の響きと、度々登場する日本の「ジェンダーギャップ(男女平等格差)指数112位」に妙な居心地の悪さを覚えました。

どちらの言葉もメディアがクローズアップしても、女性の日常が変わってきたとは思えない。

そしてもしかするとこのジェンダーギャップに対する居心地の悪さと女性首相辞任に対してモヤモヤしている気持ち、と共通するものなのかもしれない、と思い至っています。

キーワードは想像力。

なぜ想像力なのか、自分は想像力を豊かにできるのか、ジェンダーギャップ指数4位のニュージーランドにおける女性元首相ジャシンダ・アーダーンを紹介しつつ、考えていきます。

ジェンダーギャップ(男女平等格差)指数※ ・経済政治教育保健の4分野における男女格差の統計データから数値化(スコア化)し、平均値として算出されるもの

ジャシンダ・アーダーンとは?

2017年10月、世界で一番若い女性首相としてニュージーランドに誕生したのが37歳のジャシンダ・アーダーン(Jacinda Ardarn) 。

驚くことに、その8ヶ月後の6月に第1子を産み、6週間の産休後に公務復帰。その直後の9月に、3ヶ月の乳幼児+パートナーを連れて国連入りしたことは、日本だけでなく、世界中のニュースになりました。

就任から辞任に至るまで、日本の政治世界とはおよそ異なる様相の連続であったことは言うまでもありませんが、ジェンダーギャップ指数4位のニュージーランドでも前代未聞の出来事の連続だったようです。

辞任表明に至るまで。

ジャシンダ・アーダーンのパートナーの衝撃のツイート

日本と関わりがある話ので、乳児を連れて国連入りした時についてもう少し詳しくお話します。

ジャシンダ・アーダーンのパートナーであるクラーク(Clarke)が、自身の赤ちゃんおむつ替えをしていた部屋に日本人代表団が偶然入室、その仰天するさまをツイートしたのです。それどころか、世界各国メディアがニュースとして取り上げたのです。
(ワシントンポスト参照https://www.washingtonpost.com/world/2018/09/25/theres-baby-un-general-assembly/)

日本(人)が、いかにジェンダーギャップの大きい国かというレッテルを貼られたような不名誉な記事に対し苦い思いを抱いています。

もちろん、たまたま国連の控室?部屋に入ったら、赤ちゃんがいることも、ましておむつを替えているなんて想像もつきません。その落差をニュースにしたかっただけかもしれません。

一方で、ジャシンダ・アーダーンが連れてきている赤ちゃんに対して、国連に参加しているみなさんが好意的に受け入れている記事もたくさんあったことは確かなのです。

だから、やはり「日本人代表団」がいかにその状況を受け入れられないか、女性が社会の一員として馴染んでいないかを示していたように思えてしまうのです。

もちろん、私の感覚ですが。

ジャシンダ・アーダーン2回目の国連にて

さて、その翌年2019年の秋。国連の気候変動サミットに家族抜きで出席されたジャシンダ・アーダーンに私がさらに驚いたことは、スピーチの初めの数分の挨拶に当たる部分をすべてマオリ語(ニュージーランド先住民族の言葉)を披露されたことでした。

ところで、なぜ国連の場で世界公用語ではないマオリ語で演説したのでしょう?

一つには、ニュージーランドでは、簡単な挨拶が日常的に使用されているということがあります。

TVニュース、公共の乗り物など、アナウンスは、”Kia Ora.”(マオリ語のこんにちは)から始まり、”Ka kite ano.”(さようなら、行ってらっしゃい!)と締めくくる。

1年足らず滞在していた私でも、毎日のように耳にしていました。

もう一つの理由は、国連の公用語ではないけれど、ニュージーランドにとっては、公用語であるマオリ語への敬意を国連という場で表明することにあったのではないかと想像しています。

マオリ族は先住民でありながら少数民族です。同じように、少数民族には、NZ周辺諸島からの環境難民(environmental refugee)を受け入れています。

このように少数民族を尊重する姿勢を、この公の場で表明したかったのではないかと。

マオリ民族以外で、これだけのスピーチを原稿を読み上げることなく語るのは、それなりの時間と労力が必要です。

晴れ舞台に臨むべく注ぎ込むエネルギーは、マオリ族への敬意、マオリの土地を代表している意思の強さでもあり、仕事への取組み姿勢を如実に国民に語りかけているようでもあります。

国際的なまつりごとに赤ちゃんを連れてくるだけの人なのだと、一年越しに改めて尊敬の念をおぼえました。

在任中に起こった大きな事件や出来事について、次に彼女の神対応を紹介していきます。

クライストチャーチモスク銃乱射事件

上述したマオリスピーチを国連で披露する数ヶ月前、2019年の1月、世界を震撼させた銃乱射事件がニュージーランドのクライストチャーチで起こります。

一人のオーストラリア国籍の白人によってもたらされたニュージーランド史上最悪の事件と言われ、100名ものイスラム教徒の死傷者を出しました。(うち死者51名)

ジャシンダ・アーダーンが事件直後から犠牲者たちのことを”They are us.”と、被害者家族たちには”You are us.”と一貫して語りかけ、悲嘆にくれる彼らを抱きしめる一国のリーダーの姿は、世界中の人の心を動かさずにはいられない報道となっています。

死傷者の多くは中東から移民としてNZへ渡航してきた人やその孫子。犠牲者たちやご家族たちが外から来たよそ者ではなく、ニュージーランド社会の大切な一員である”私たち”であるとこの女性首相は訴え続けました。

犯人の思想を徹底的に否定する姿勢を示し、国民にその意識を浸透させるのに絶対的に有効なパフォーマンス。

日本のリーダーにこのようなことができる人は、一握りもいる?ニュージーランド留学を控えていた私に彼女の言動は、外国人として心強く響き、渡航の気持ちを固めてくれました。

着目すべきことは感情面に訴えることで終わらせない彼女の決断力と実行力。

事件当日から銃規制に関する約束をし、2週間以内に国内の法律を制定しました。

さらに、非社会的、非人道的、悪質動画に関する規制も敷きました。

この一連の犯行において、実はこの犯人、カメラを身につけてインターネット動画として実況配信までしており、それを拡散した人たちまで存在していたんです。

こういった決断力、行動力こそが、見せかけのパフォーマンスに終わらない責任感と意思の強さを表し、頼もしく思います。

何と言っても、それを実現できるのがニュージーランドの良いところ、国民性のおかげと周りへの敬意を忘れない神対応を私も真似したいと常々思っています。

ホワイトアイランド噴火

同じ2019年、暮れも迫る12月、観光地であるホワイト島という無人島で噴火が起きます。

季節は初夏、運悪く日中に噴火したため、無人島にも観光客が訪れていました。

死者20人。

ニュージーランドの人口は500万人。人口比率で換算すると日本で480人の死者を出すような規模の大事件です。

ニュージーランド国籍以外の人たちも多かったのですが、モスク銃撃事件と同様、被害者家族に寄り添う姿は印象に残っています。

コロナ禍であっても翌年は(日本でいう)慰霊祈念行事に、ノーマスクで参加されています。

コロナ禍に

噴火から数ヶ月もたたない年明け2020年の2月にコロナ禍に突入。日本でいう非常事態宣言の中、毎日13時に、厚労省に相当する広報兼専門家とともに、現状報告をし、国民たちに毎日必ず心強いメッセージを送っていました。

このコロナ禍での彼女の采配こそリーダーシップの本質を見た気がしました。それは、毎日発信していたからではなく、次のような要素があると考えています。

  • 迅速に決断し動いていたこと
  • 情報の透明性を担保していたこと
  • できないことは、できないと認めること
  • 国民に寄り添い、共感していたこと

“Be kind.”これがこの時の標語でした。このフレーズを彼女は強調し繰り返し使いました。

心がささくれ立つつらい状況下に、この一言は一国の首相が自分たちの立場に共感してくれているというメッセージを送っているように見え、心から国民に語りかけていることが伝わります。

ジャシンダ・アーダーンのもつ想像力と日本のジェンダーギャップ

国民に対しても、ご自分の仕事に対しても、ジャシンダ・アーダーンは覚悟と愛情をもって国のリーダーという役割を責任をもって真摯に引き受けていました。とにかく姿勢が一貫している。

コロナ禍では特に、海の向こうからニュージーランドのニュースやメディアの発信する動画を見るにつれうらやましく思わない日はなかったです。

同時にこれは日本の政治家たちについて本気で考え、選出する責任の一端を自身が担っていることを痛感させられました。

ジャシンダ・アーダーンや彼女をサポートする政治家たちと比べた時、日本の政治家が国民に共感していると思える機会が少ないのは、なぜなのか?

政治家たちが共感する言葉を表現する機会や頻度が少なかったり、例え使っていても、表層的で気持ちが全くこちらに伝わってこなかったりすることにあると確信しました。

これって実は男性が女性の立場に共感しづらい社会であることと問題の本質は同じのではないかと気づいたのです。

つまりジェンダーギャップの解決のカギ。それが「想像力の欠如」

意外なジャシンダ・アーダーンの一面から考える

ジャシンダ・アーダーン本人談によると、心配性で泣き虫なところもあるようなので、性格的な特徴でもありますが、共感力が高いのは、想像力の豊かさ故だと思えてなりません。

自国民と自国の将来への想像力が働くからこそ、心配性であっても重大な法規制を果断に実行できるのです。

想像力がないと、「自分基準」「自分都合」で思考し、行動し、発言してしまいます。

この社会には誰一人として同じ考えを持つ人も、同じ状況にある人もいません。

悪意のない言動でも、他者への想像力をちょっと持つだけで控えることはいくらでもできます。もちろんそのためには「知る」ということもとても大事な要素になります。

「無知は罪である」というソクラテスの言葉は手厳しい。

でも、知識人であっても有名なユーチューバーたちが炎上するケースがあるのは、やはり想像力の欠如が原因だと思うのです。

余裕のない日を送るとついつい欠落してしまう想像力。

だからこそ心がける必要があり、そのことで、日本社会のジェンダーギャップの溝が埋まるかもしれないと少し解決の糸口が見えてきた思いがしました。

国内での評判の推移

ジャシンダ・アーダーンの愛情深さ、政治的手腕や有能ぶりをご紹介しましたが、ニュージーランド国内での実際の支持率や評判も気になるところです。

国内・外でその評判が少し分かれる側面をも持ち合わせていると現地に行って気づきました。

私の出会ったニュージーランド人の多くが、彼女のことを語る時、外国人の私に対し「海外では聞こえがいいけど」と枕詞のようにつけることが度々。

辞任に至るまで、私が耳にした国民たちの声をまとめてみます。これらは私の行動範囲内で聞いた限定的な情報であることをご承知おきください。

就任当初

就任早々子どもを産み、それでもなお入籍せずにパートナーという関係を続けることを「売り」にしている。一部の、特に年配女性(50代~)から時には批判されながら、好ましく受け止められない場面もあったようでした。

モスク銃乱射事件

この事件を機に彼女の支持率が急上昇。ことさら海外(メディア)から高い評判を受けました。

ジャシンダ・アーダーンの持つ共感力、想像力が最大限に発揮されたからでしょう。

悲惨な事件とは裏腹に、国民もこの若き女性首相(ジャシンダ・アーダーン)に好意的になり支持するようになっていったようです。

コロナ禍初期

先述したことと重なりますが、コロナ禍では他国に先んじた施策を果断に実行し、その支持率はピークに。私の知り合いの多くは、自国の首相がジャシンダ・アーダーンで誇りに思うと語っていました。

ここでも、彼女の特徴が最大限に発揮されたといえます。

一方で実はこれが仇伴っていたようで、「メディアに出過ぎた」と辞任表明の背景にあるバッシングの理由を語る現地の人もいました。

とはいえ、海外メディアはこぞってニュージーランドのコロナ政策を成功とたたえていました。

コロナ収束期

コロナが収束に向かいつつあると同時に、経済問題の失態が浮上。

雇用問題、住宅問題、物価高の三つ巴の経済問題については、就任当初から依然として抜本的な解決策が講じられないまま。

特にインフレと住宅問題は、留学していた私自身も避けて通れず、国民の不安や不満をリアルに理解できます。

とはいえ、在任期間中に最低賃金を着実に上げていきました。(1NZD=80円換算)

就任時:NZD 15.75(1,260円)

退任時:NZD 21.20(1,700円)

5年で500円も上昇!!(日本は2023年3月現在、全国加重平均:961円、東京:1,072円)ほぼ日本の倍ですよ?!

しかし2022年11月には支持率が33%とダダ下がり。SNSで悪質なバッシングに遭っていたことを辞任会見後に知ることとなりました。

首相辞任理由

一方で、辞任理由を選挙でどうせ負けるからその前に引退したのでは、と言う人もれば、

先にも述べたことの繰り返しになりますが、コロナ禍でメディアに露出し過ぎだった、と言う人もいます。

どういうわけか、男性に多い意見でした。

辞任の理由は一つではないでしょうが、私が何よりも感じるのは、悪質なSNSでのバッシングが大きかったのではないかということ。

ジェンダーギャップ4位の国でこんなことが起きていいたのか?とそれはもう驚愕の事実でした。

辞任理由をもう少し客観的に見つめるのに、ジャシンダ・アーダーン本人のコメントと、彼女の20年ほど前にニュージーランド首相を務められた女性元首相のコメントをご紹介します。

ジャシンダ・アーダーン本人

彼女の辞任表明文が1月19日付Facebook にあります。本当にザックリですが、以下のことに尽きます。

  • 5年半を振り返り、どれほどやりがいのある仕事であったか
  • この仕事には、フル充電されたエネルギー+αが必要であること
  • 今の自分にはエネルギーが枯渇していて、その状態で任務を遂行するのは無責任であること
  • 4月以降の具体的な計画はないが、犠牲にしてきた家族との時間を優先した生活を送りたい
  • NZ国民には感謝しかないが、お返しに信念をお届けできたらうれしい(本記事最後に記載します)

その言葉を耳にして、私なら一生かけても到底なしえないエネルギー量だと感じます。

国の首相はただでさせ甚大な重責を負っています。それに加えて実は性差別的なコメントも含め多数の誹謗中傷被害を受けていたのです。

ジェンダーギャップ指数4位の国なのに!これではエネルギーが充電される余地はありません。

大先輩ニュージーランド旧女性首相ヘレン・クラークさんのコメント

驚きと怒りを覚えたのは、ジャシンダ・アーダーンの大先輩であるヘレン・クラークの記事とそれに関連するものを読んでから。

ヘレン・クラークは1999年~2008年までの3期も首相を務め上げたのち(NZの選挙で選ばれた初の女性首相)、国際連合開発計画の初の女性総裁として2009年4月から2017年4月まで就任されていました。

その彼女のコメントにまつわる記事がコチラ。Helen Clark calls for rethink on political debate in wake of Ardern resignation:アーダーン辞任を受け、ヘレン・クラーク氏は政治的討論について見直しを呼びかける

記事の要旨は以下の通り。

  • 政治家に人気の上下があるのはつきもの
  • 自身の在任時は、辛辣な意見にさらされるのは、talkback radio(ラジオ?)という形がもっぱらで、インターネットのような集団心理も働かず、24時間でもなく、強烈な悪意もなかった
  • 現在の政治家は(インターネットのせいで)24時間、辛辣な批評にされされている
  • ニュージーランドでこのようなことが起きたことはかつてなく、アメリカ政治の悪しき側面の影響をかなり受けていると想定される
  • ニュージーランド人が政治の正しい議論に立ち返るべき時
  • ジャシンダに対する不当なまでの批判を目にあまる
  • 反ジャシンダは反ワクチン派が多数を占めるようだが、非科学的である
  • ジャシンダの決断は驚くに値せず、正当である

穏やかな国民性を持つニュージーランド人ですが、意思表示をしっかりとすることも私は知っています。

でも、表現法が著しく間違っていることは明らか。

想像力の欠如した意思表示は他者を傷つけ、翻って自分の意思が通らないことの方が絶対的に多く、結果的に自分に不利に働きます。

この記事に関連したものでより具体的に、SNS上でのバッシングの詳細が書かれた記事があります。(The hatred and vitriol Jacinda Ardern endured ‘would affect anybody’:ジャシンダ・アーダーン氏が受けた攻撃は、あなたにも影響を及ぼす。)

文中には実際にジャシンダ・アーダーンが受けた性差別的な激しい言葉の羅列も含まれています。ここに書くのもおぞましい、本当にあり得ないレベルの言葉が並んでいます。

そういったSNSでの発信を取り締まる、と次期首相(つまり現首相)のクリス・ヒプキンスは就任前から宣言していました。

現首相の宣言した詳細内容はここでは割愛しますが、ジェンダーギャップ112位の日本も4位のNZも五十歩百歩なのか?と疑った瞬間でもありました。

ジェンダーギャップの本質的な問題

さらに、この辞任報道にあたり、ジェンダーギャップが実は世界中にはびこっていることを表す衝撃的なニュースが飛び込んできました。

それは、イギリスBBCが性差別的な表現で糾弾されたものでした。

見出しを取り下げたBBC?!

イギリスの報道局であるBBCが、ニュース記事を紹介するTwitterの見出しに”Can women have it all?”(女性はすべてを手に入れられるのか?)としましたが、多くのクレームにより急遽変更。

“Departure reveals unique pressures on PM”(首相辞任の背景に独特の圧力)となりました。

内容からしてもこちらタイトルの方がより適切です。

問題なのは、すべて手に入れるのは「男性と違って女性は不可能」というように受け取れること、退任理由が「男性ではなく女性だから」と聞こえること。

詳しい顛末はこちらに掲載されています。“BBC admits error over ‘Can women have it all?’ headline on Jacinda Ardern resignation story”

紳士の国と言ってしまうと、その言葉自体が性差別的になってしまうのかもしれませんが、そのイギリスの大手報道機関ですらも、女性に対する差別的な表現をSNS上で披露してしまう現状。

批判によって謝罪し、取り下げただけ、もしかすると健全な国?なのかもしれませんが、想像力が欠如しているのは、どこの国も同じ。

だからこそ国際女性デーというのが全世界で声高に言う必要があるのかと少し理解できた気がしました。

イギリスGuardian誌からみえること

同じイギリスにGuardianという新聞社があり、そこに記事を連載投稿しているフェミニスト記者Arwa Mahdawi(アーワ・マーダーウィ)が、今回の辞任報道で面白いことを述べています。

お題は”Jacinda Ardern proved a true leader knows when to step back. If only US politicians did the same“(ジャシンダ・アーダーンは辞め時を自覚する真のリーダー。アメリカの政治家たちが同じことをしていたなら)

オンラインでの辛辣なバッシングには一切触れていませんが、何が面白いって、徹底的に世界中の男性リーダーたちとコミカルに比較していることです。

この記者はニューヨーク在住の、パレスチナ系イギリス人で、男性やアメリカに対するユーモラスな皮肉が定評のようです。

  • 前・イギリス首相ボリス・ジョンソンが、7人も子供がおり、在任中に実は2人誕生していたのに、政治家と私生活のバランスや7人の子供への責任について書かれている記事は少ない
  • イーロンマスクが、何番目かの子どもが生まれた時(実際に9人いるようです)、火星制覇と父親の役割をどうやって両立しているかBBCは問うてない(火星移住構想計画を立てているため)
  • ジャシンダ・アーダーンが政治世界で男勝りな態度を取らず、存分に力を発揮したことを礼賛
  • リーダーとは声の一番大きな人ではなく、退く時を知っている人
  • アメリカ議員の平均年齢は64.3歳、現バイデン大統領は歴代最高齢の80歳でなおも2024年の選挙に出馬の意向。42歳のジャシンダ・アーダーンの辞任理由が、エネルギーの枯渇であるなら、2倍近い年齢の人たちはどれほどのエネルギーを持ち合わせているというのか?(英語表現のtank を巧みに表現)
  • アメリカの政治家たちはエネルギーではなく、ナルシズム(自己愛)が職務を全うしている原動力だと言わざるを得ない

ジェンダーギャップについての指摘のみならず、職務を全うする上での責任の根幹を鋭く見抜いています。

自身の反省点ですが、男性リーダーたちに子どもが誕生しても、ニュースになりづらいということもありますが、女性リーダーと比べた時、家庭との両立が大変だろうな、と想像力を働かせたことがなかったこと。

私自身もジェンダーバイアス(性的偏見)が刷り込まれているのだと気づかされました。

2022年ジェンダーギャップ指数112位の日本でできること

NZの女性元首相ジャシンダ・アーダーンの辞任発表から一連の記事を見てきましたが、それでは日本人として、いったい何ができるのか?

偏見を抱えている私ももっと意識的に男女の性差的な考えを持たないようにすればいいのか?

考えましたが、答えは出ません。でも、わかっていることは、想像力が必要なこと、余裕がなくなると想像力が働きにくいこと、の2点。

例えばですが、

  • ウクライナで起きている戦争の被災者たちの生活や心情
  • トルコの大地震で激変した市民の生活や犠牲者のこと
  • 日本にも経済的に、精神的に生活に苦しむ人々

屋根のある安全な家で目覚め、ごはんを食べ、仕事をし、友だちと他愛もないおしゃべりをし、家族と団らんし、お風呂に入って寝る。

このような日常的な生活を送れないことが、どういうことか、身近なところから遠い国までを想像することこそ、ジェンダーギャップの溝を埋めることにもつながるのではないかと思うのです。

想像力を豊かにすることは難しく、人によって方法も異なるでしょう。

考えても何も変わらない人は、読書によって他人の人生を追体験することも一つの方法かもしれません。

まとめ

以上、ジェンダーギャップの本質って想像力の欠如ではないかと思っていることをお話しさせていただきました。

そしてそれに気づいたのが、ジャシンダ・アーダーンの首相辞任表明時で、具体的には以下のことをきっかけとしていました。

  • 辞任に至るまでのSNS上の明らかな女性蔑視を含んだコメント
  • BBCの記事のタイトル炎上事件
  • Guardian誌の女性記者によるアメリカ人男性や政治家達との比較

最後に、ジェンダーバイアス(男女の性差別)が大きいのは、ジェンダーギャップ112位の日本に限ったことではないことにつながります。

終わりに

前NZ首相のヘレン・クラーク女史もGuardian誌記者のArwa Mahdawi女史も、Jacinda の辞任に全面肯定の意思表明をされています。

ジャシンダ・アーダーンの辞任演説のFacebookのページのコメント欄には、彼女の仕事ぶりを賛美する人たちの温かい言葉のシャワーが驚くほどたくさん見られます。

ジャシンダ・アーダーンのすばらしいお働きに心から敬意を示し感謝申し上げるとともに、当面エネルギー補充を優先させていただきたいです。

フル充電された暁には、首相経験を生かし、新たな形でジェンダーギャップ指数4位の社会をさらに向上させるべく活躍されるでしょう。

この出来事を通して日本にいる日本人ができることは何だと思いますか?

「想像力を持つこと」と記事内では一言で片づけてしまったようなところがありますが、考えるのにいい材料として、ジャシンダ・アーダーンが辞任演説(Facebook記載)の締めくくりの言葉をここにつづって締めくくりたいと思います。

一人でも多くの人が日本社会に居心地の良さを覚えられますように。

最後までお読みくださり、どうもありがとうございます。

I leave behind a belief that (私は次の信念をみなさんに残して去ります)

you can be kind, but strong.(私たちは心は優しくかつ強くもなれる)

Empathetic, but decisive. (他者に共感しつつも決断力を持つこともできる)

Optimistic, but focused.(楽観的でありつつも、ぶれずに集中することもできる)

That you can be your own kind of leader – one that knows when it’s time to go.

((適切ではない場所からの)去り際を認識できる、そんな自分自身のリーダーになれるのです。)

※本文中の和訳はすべて筆者の意訳となります。

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