日本人はイライラしすぎ?!不寛容な社会をなくすために私たちができること。

国内外での生活
寛容社会のコア

先日通信会社の通信障害トラブルによって、日本人の多くがリアルタイムで情報や人とつながりにくい状態に陥りました。

仕事や個人的な予定が滞ってイライラして、周りやSNSに八つ当たりしてしまったという人もいるかもしれません。

IT技術に頼る社会はこういう脆弱性を持ち合わせているよね、ドンマイ、と社会全体が寛容的な態度に出ていたとは到底いいがたく、イライラし過ぎでは?とすら思える反応の人も少なからず存在していました。

このようなバッシングの風潮は、寛容さの低いこととも関係していて、生きづらい社会につながっている気がします。

イライラしている人が減り、不寛容な社会をなくすため私たちができることは何だろうか?と考えてみました。

※日本人の中にはあまりイライラすることなく寛容な人もいます。「日本人」を一括りにするのは乱暴な側面もありますが、記事内容の趣旨が日本人批判ではないことをご理解いただければ幸いです。

通信障害に遭遇した人の行動は?

先日の通信障害トラブルに遭遇した人の多くは、以下のような生活を余儀なくされたのかなと、想像してみました。

  1. 情報検索ができない、連絡がつかない → 予定変更に、イライラ!!
  2. いつもなら携帯通信を通してできることが出来ず、イライラ!!
  3. 身近な人にぼやいた、SNS上で通信会社批判をした
  4. メディアで通信会社批判を見聞きして、自分のイライラは正しかった!と解釈

ここで、「イライラを感じること」「SNSでの他者攻撃」が、不寛容社会を表す大きな要素ではないかと感じています。

逆にその原因を探ることが日本人のストレスやイライラを減らしたり、不寛容な社会をなくすため私たちができることを探る手がかりとなると考えました。

イライラの原因は?

不寛容社会の要素の一つ、「イライラの原因」からまず見ていきます。

通信障害までいかずとも、比較的ささいなことでイライラしてしまうことってありますよね。イライラするのは人間だれしもあるもの。日本人だけの話ではありません。

外国の事例では、2022年アカデミー賞授賞式典で怒りを露(あらわ)にしたタレントの行動がマスコミをにぎわせていたことは記憶に新しいですよね。

そこで怒りの理由を調べてみました。

思い込み

予定通りに事が運ばないことでものすごくストレスを感じたり、想定外の事態に身動き取れずに固まってしまったりすることってあります。それがイライラという感情に即直結するのは「~でなければならない」という完璧主義の傾向の強い日本人の弱点かもしれません。

私の知る範囲ではラテン系の人たちは、そういう状況でも明るく対処する術を身に着けています。涙がでるほどつらい逆境でさえも、楽しんでしまえるマインドやパワフルさを目の当たりにして、何度尊敬の念を抱いたことか!

そしてわかったことは、イライラの原因の発想「あるべき」は実は思い込みでしかなかったということ。教育現場に関わっていた身としては、この思考経路は日本人が小さいころから減点方式で評価されてきた教育環境による影響が非常に大きいと思えてなりません。

怒りのカモフラージュ?

イライラ、つまり怒りの感情は人間の生存本能、防衛手段のために派生するものです。

ところが問題は、怒りの前に本来の感情が存在するのに、怒りの裏に隠れて多くの場合自覚されずにいること。自己防衛のために本当の感情が隠れてしまうのです。

本来の感情とは、例えば仕事で上司が部下に対して怒った場合、「部下への期待がかなわず『悲しい』から怒った」「予定が狂って『困った』から怒った」。親が帰宅の遅い子ども叱る場合、「何かあったのではないかと『心配』だから怒った」などです。

つまり「悲しい・困った・心配」などの本来の感情よりも怒りのエネルギーが強いために、相手に伝わるのは「怒られた」、自分に向けられたのは「怒り」になりがちなのです。

本当の気持ちが伝わらないどころか、強いエネルギーだけが発せられると、大切な人間関係が損なわれる可能性もあるわけです。

先ほど例としてとりあげたアカデミー賞授賞式での出来事は、恐らくここに該当するのでしょう。

幸せになるための感情

人間は同じ事象でも、自分と無関係なところで起きた出来事、あるいは無縁の人に対しては怒りを覚えないそうです。

正確には、怒りは覚えても、先に述べた「本来の感情が隠れてしまうほど大きなエネルギー量の怒り」が湧かないのだと想像しています。つまり、関係の薄い人や事象に対しては「残念」「悲しい」「もどかしい」という正しい感情認識ができるのだと思います。

逆に言うと、関係の密接な人たちや出来事は自分の幸せと直結することが多いため、防衛本能も働き、その分怒りのエネルギーが強烈になって本来の感情が自覚できなくなるのです。

同じ言動であっても、友達がしていても何も感じないのに家族の一員がしていたらイライラする、ということって誰しも一度は経験したことありませんか?それは家族への期待値が高いことが大きく、期待する先には自分の幸せがつながっているからなのです。

脳がギブアップ!

怒りの本質は「脳が理解できないサイン」だとも言われています。目の前で起きている現象が「わからない!」という状態で、本質的には相手のこと、起きていることをもっと理解したいのです。

理解したい欲求が強いほど怒りも強くなるのでしょう。通信障害はまさにここに該当すると言っても良いですね。

脳がヒマ?!

怒っている人の脳は暇なのだそうです。他のことに脳が集中していたら、怒ること・怒り続けることが出来ないのです。

ある研究によると、利き手ではない方の手を意識的に使っていると、怒りにつながるまでの時間が延びるという結果も出ているそうです。つまり、利き手ではない方の手で作業をするということは、利き手と比べて脳が忙しいために怒る余地がその分少なくなる、ということなのです。

確かにクレーマーに対して、他にやることないのかな?思うことはよくあります。怒ることは、時間的にも余裕があることもあるし、脳にとっては暇つぶしであり、もしかすると簡単な作業なのかもしれない、とすら思えてきます。

詳しくは「脳内科医・加藤俊徳先生「怒っている人の脳は暇なんです」

遺伝子

日本人は物事に対する許容に関する遺伝子が、比較的少ないそうで、そもそも怒りやすい国民性でもあるようです。

私達の体内にはセロトニンという精神を落ち着かせて安定させる脳内物質があるのですが、これがストレス耐性や、ネガティブな感情の抑制に深く関与しています。

さらに、このセロトニンを運ぶたんぱく質「セロトニン・トランスポーター」が存在して、3種類の遺伝子型に分かれます。遺伝子の型によって運べるセロトニン量がことなるのですが、日本人は運べる量の少ない型を持つ人が多いようなのです。

イライラしすぎたり、ちょっとしたことでクヨクヨしたり、ささいなことですぐにカーッとなるのは、ストレス耐性が弱く、セロトニンが少ないために感情があふれやすいことも影響するのかもしれないのです。

詳しくはこちら。『【精神科医が教える】すぐに怒る人、いつも穏やかな人の違いは、環境なのか遺伝なのか?』 DIAMOND online より

これを読んでから、自分や他人が怒っていても、「あ、バケツがいっぱいなんだな」とイメージする余裕すら出てきたり、怒っていりことも仕方ない許容できたりしそうな気がしてきます。

SNSバッシングの原因

不寛容社会の要素のもう一つ「SNSでの他者攻撃」の原因をみていきます。

個人的にはSNSの発達ととともに、不寛容社会がますます進んでような印象を受けているだけに、この原因は不寛容な社会をなくすためには、強く意識した方が良い事項だと考えています。

匿名性

SNSでは個人が特定されることもなければ、顔を見られることもなく、他者を攻撃することが出来ます。実社会では発言できない場合でも、むしろできないからこそ、SNS上で他者批判に走る傾向があるのかもしれません。

自分の発信する意見に責任を持っていないとも言えます。

集団性のもつ弊害

一人で考えたり発信している時より、集団で発信する時の方が極端な方向や結論に暴走しやすいようです。「赤信号みんなで渡れば怖くない」といった同調が起こりやすいこととも関係します。

リアルタイムで瞬時に人とつながるSNSの世界ではリアルな世界より集団ができやく、責任逃れの安心感がもたらす暴走の傾向が強くなるのでしょう。

以前、ふざけて冷蔵庫に入ったアルバイトの若者の画像がネットで炎上した際、激しいバッシングにより当該店舗は閉店に追い込まれ、本人も特定されてしまった事例はまさしくこのことです。

常識で考えると閉店しなければならないほど重大な出来事と思えません。ところが集団で同じ事象を批判しているうちに、自分一人ならば過剰な言葉で批判したり執拗に攻撃し続けないことでも、エスカレートしやすい状況ができあがるのです。

つまり赤信号を渡ることの抵抗を下げるような「責任逃れの安心感」を生み出し、重大ではない過失などが必要以上に糾弾されることにつながるのです。

欲求不満?!

人は聖人君子ではないので、ネガティブな感情や心理を排除することはできません。でもそれらを自覚せずにSNSで他者を攻撃してしまうのです。具体的に見ていきます。

自己承認欲求

自分の優位性を満たすため、あるいは現実社会での不安や不満のストレス解消先に、SNSは絶好の空間として選ばれてしまうようです。これが他者批判の最たる理由だと秘かに思っています。

正義感

「正しい主張」が通って、何かが変わると「自分が社会を動かした」と前述の「自己承認欲求」が満たされます。それが快感になって繰り返すものの、何も変わらないことの方が多いためさらに過剰な行動に走ってしまうのです。

「コロナ自警団」「自粛警察」などは最たるものでしょう。

妬み(ねたみ)・僻み(ひがみ)

有名人やインフルエンサーなどに対して、羨ましいという気持ちが我慢の出来ない怒りへとつながってしまいます。スポーツ選手に対するバッシングはこちらでしょう。

怒っている時の脳内と注意点

イライラの原因がわかったところでさて解決策は…と言いたいところですが、その前に、怒っている時に脳内で何が起こっているかを知ることがカギとなるので、そのお話をさせてもらいます。

怒っている時には注意が必要なんです。なぜ必要で、具体的に何に注意すべきかをお話します。

  • 脳がすごく非効率になっている
    脳の血流が過剰に上がって、適切な判断が出来なくなり、時にはパニックにも。
    1時間程度血流が戻らないので、時間を置くことが必要。上述したように緩く身体を動かすことがおすすめです。(詳しくは「脳内科医・加藤俊徳先生「怒っている人の脳は暇なんです」
  • 怒りの連鎖
    怒りは連鎖します。誰しもこの経験をお持ちではないでしょうか。
    怒っている人と距離をとり、SNSが怒りの原因であればシャットアウトがおススメ。どちらもできれば1時間以上置くと良いですね。
  • 人間関係の破綻
    怒りの前に存在する本来の感情ではなく、怒りだけが相手に伝わってしまう。
    怒りをぶつけてしまった後であっても、謝罪と共に本来の感情を相手にきちんと伝えたいですね。これも1時間ほど置いてから良いでしょう。

怒っている時にそれほど脳が非効率になっているという自覚は、私自身全くありませんでした。むしろ怒りのエネルギーで仕事を進めていたことすらあったほど。

でも、そんな気持ちで向き合った仕事って非効率でもあったでしょうし、結果的に虚しさしか残りません。血流が下がると冷静になるので、痛いほど虚しさを実感できることがあります。

解決の糸口はイライラ封じ・・・ではない?!

以上、不寛容な社会を構成する「イライラ」と「SNS上でのバッシング」の理由、「怒っている時の脳内と注意点」をそれぞれ見てきました。

イライラの理由は自分が怒りを覚える時の状況にバッチリ該当していました💦

一方でイライラは人間の本質とも関わることなので、それを封じ込めるのは人間として不自然です。しかも、私には「無理」❕❕

とはいえ、イライラの原因がSNSであるからと言って、SNS利用によってイライラを解消することは賢明とは言えません。またSNS以外でイライラしすぎているなと感じる時はどうしたらいいのでしょう?

今までの話を総合して、怒りは封じ込めることなく、上手に付き合ったり解消する方法を私なりに考えてみました。

リアル世界に着目

経験上、SNSは気持ちをネガティブにさせる傾向があるように思います。そこで、怒りの原因が何であれ、まずリアルな世界との関りを持つべきとだと2点ばかり考えてみました。

  • 身体を動かす
    イライラするのは脳がヒマだから、ということに激しく納得したので、とにかくリアルに「身体を動かす」こと。
    1時間ほど継続できるものが良いので、イライラしたら「料理をする」「散歩に行く」「音楽をかけてストレッチをする」など良いかもしれません。
  • デジタルデトックス※
    メッセージの受信通知に反応したり、書き込みに反応しそうになったとき、とりあえず放置。
    1時間で良いのでSNS断ちしてみる。

デジタルデトックス:一定期間スマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスとの距離を置くことでストレスを軽減し、現実世界でのコミュニケーションや、自然とのつながりにフォーカスする取り組みを指します。

異なる文化背景を持つ人の発想から学ぶ

日本人がイライラし過ぎる側面を持つことがわかってきましたが、一方で、異なる文化を背景に持つ人達の許容度、寛容性はどのようなのでしょうか。

日本人ならストレスを抱えそうな状況であっても、上手な返しによってイライラしないコミュニケーション法があることをあるお子さんから学んだので、その例をご紹介します。

そのお子さんAちゃんとします。Aちゃんは異なる文化背景を持つご在日外国人のお子さんで、今回紹介するお話は、その親子に関して数あるおもしろエピソードの一つになります。

ある日、そのAちゃんが前日と同じ洋服を着て小学校に登校しました。

クラスの子:「それ昨日も着ていたよね?」(悪意あり)
Aちゃん:「そうだよ。昨日はこれを着たまま寝たから、そのまま着てきたの。」(ケロッと返答)
Aちゃん:「お姉ちゃんなんてパジャマのまま学校行ったよ。」

クラスの子からしたら想定外の反撃では?
イライラしたり、動揺したりしなかったんだろうか?

小学生ながらその子の発想の豊かさに拍手喝采!

「赤信号みんなで渡れば怖くない」という同調圧力が比較的強い日本文化、それ故に不寛容さも持ち合わせている社会の中で育ち、生活しながら、その圧力に屈しないたくましさも同時に覚えました。

その子と、そのように育てられている親ごさんに敬意を抱きつつ、自分自身に対しても様々な問いが沸き上がりました。

はるかに年上で経験値も重ねているはずなのに、Aちゃんと同じような「返し」ができるか?
そういう状況に追い込まれた人と居合わせたら傍観者になっているかも?
当事者として何ができる?

そもそも同調圧力に屈せず、寛容社会に向かえるような言動ができるのかな?

Aちゃんが教えてくれたことは、ある意味で私の海外生活で学んだこと以上に大きいものとなっています。

日本人がもっと異なる文化背景を持つ国の方々と交流したり、深く知ったりすることもまた、イライラと上手につきあう方法の1つともなり、引いては不寛容な社会をなくすことにつながると思うのです。

Aちゃんが大人になって今回のような通信障害が起きたら、「みんなで※デジタルデトックスできてよかったね~!」なんて言うかもしれません。

デジタルデトックス:一定期間スマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスとの距離を置くことでストレスを軽減し、現実世界でのコミュニケーションや、自然とのつながりにフォーカスする取り組みを指します。

まとめ

以上をまとめます。

  • イライラの原因
    「~あるべき」というこだわりや思い込み、本当の感情が怒りの裏に隠れていること
  • SNSの他者攻撃の背景
    匿名性とだからこそ責任を伴わない特徴があること、この特徴がネガティブな同調と行き過ぎた攻撃を起こしやすいこと
  • イライラ解消法
    1時間程度時間をおき、身体や脳内を忙しくすること、デジタル機器から離れること
    異なる文化背景を持つ人との交流で思い込みや、イライラから解放される可能性があること

振り返ってみて、いかがでしたでしょうか。中には思い当たることも、あったかもしれません。イライラや怒りは大切なものを守るために働く防衛本能。

ネガティブな感情を排除することはできませんが、口から発する言葉や高度はある程度コントロールできますよね。

ネガティブな言葉を発する時、その言葉を一番近くで耳にしたり目にしたりし、その言葉が最も脳内にインプットされるのは、受け取った相手よりも発している本人と言われます。その理由の一つは、人間の脳が発した言葉の「主語」をインプットしないからなのです。

「お前はバカだ」という言葉を発した場合、「バカ」という言葉だけがインプットされるのだそうです。まして暴言を吐く場合、主語がないことが多いのでその言葉はそのまま発した人本人の脳内に刻まれます。相手に向けて発したのに無自覚のうちに、自分自身を攻撃し傷つけるのです。

不寛容社会をなくすために私たちができることは、案外とてもシンプルなことで、「自分を傷つけないように、大切に自分と向き合うこと」なのだと思えてきます。

「あなたは自分を大切にしていますか?」

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