英語のフォニックスって聞いたことありますか?
- 発音メソッド(習得方法)として、なんかよさそう
- 英語学習においてはプチ流行するくらいいいものらしい
- 「うちの子、フォニックスやってます」っていうとスペシャル感がある
- 子供向けの学習法
どれもある程度は正解。
ただ、具体的にどんなメリットがあるのか、詳しくはよくわかっていないかも…
是非この記事でフォニックスについて理解し、英語の基礎となる力を鍛えていただければ嬉しいです!
フォニックスを学ぶと何がいいのか、知らないことでどんなデメリットがあるのか、お話ししていきす。
※本記事内で話している英語とは、すべて北米(カナダ・アメリカ)英語が前提となっています。
フォニックスとは
フォニックスとは、英語の文字と、英語の発音の関係をルール化したもの。
@マークで有名な”at”を「アット(ゥ)」と多くの人が発音でき、逆になぜ「エー・ティ」と読む人がほとんどいないのかというと、このフォニックスルールが働いているから!
具体的に説明しますね。
at を分解すると “a”, “t” の二文字。
a:名称「エイ」 発音「ア」
t:名称「ティー」 発音「トゥ」
aの発音「ア」+ tの発音「トゥ」= at 「アットゥ」となるのです。
そんなのローマ字で習ったから同じでしょ?とお思いの方。そうです、半分くらいは、同じで、ローマ字の感覚でOK!
でも音源を聴いていただくとわかりますが、正確には”a”は日本語の「ア」という音ではありません。
とても注意が必要なケースも出てくるので、ローマ字とフォニックスの読み方の違いについては少し先で詳しくお話ししていきます。
さて、話をat の例で見てきたフォニックスの特徴に戻します。
①初めて見た単語を正確に発音できる:”at” という単語を知らなくても、見た時に「アットゥ」と発音できる
②耳で聞いた単語を正確につづれる:”at” という単語を知らなくても、「アットゥ」と聞いた時に、”at”とつづれる
この2点を目的とした英語ルールの学習体系なのです。
これだけでは、今一つピンとこないと思うので、この2つの点について、詳しく説明します。
文字・つづりと音の法則
アルファベットは全部で26文字あります。その文字を読む時、基本的には2通りの読み方をします。
日本語の漢字で言うところの、「音読み」、「訓読み」が存在するようなもの、と思ってください。
「本」という漢字を例に挙げると、
「大本」→「(おお)もと」
「一本」→「(いっ)ぽん」
「二本」→「(に)ほん」
「三本」→「(さん)ぼん」
と、外国人に違いを説明するのが大変なくらい色々な読み方がありますよね!
多くの日本人は注意を払わずに使い分けて話していますが、実はこれにも日本語ルールがあるのです。
これと同じようなルールが英語にも存在していて、使い方や、文字の組み合わせによって、同じ文字でも読み方が変わってくる、これがフォニックスなのです。
これだけでは、具体的な文字とつづりの関係がわからないので、E/e という文字を使って実際に説明していきましょう。
名前読み
E/e を「イー」と読むのはご存知の通り。この読み方はアルファベットの名称、つまり名前の通りの読み方なので「名前読み」と呼ばれたりします。
憶える必要は全くありませんが、この先記事内で説明するのに使わせてもらいます。
どのような場合に「イー」と発音されるのか、以下の例をみましょう。
- “EU(European Union)”(イー・ユー):欧州連合
- “E.T.(The Extra-Terrestrial)”(イー・ティー):映画タイトル
- “e-tax(electronic tax)” (イー・タックス):確定申告などの国税電子申告納税システム
単語の一部というよりは、一文字を単体で使うときや、二語以上の単語を短縮する際、単語の頭文字をつなげる場合に「イー」と発音されることが多いのです。
きらきら星のメロディ、「A,B,C,D…エー、ビー、スィー、ディー…」と歌われているあの歌に登場するアルファベットはすべて名前読みで読まれているわけです。
仕事読み
先ほどE/eが「イー」と発音されるのは単語の一部というよりは文字単体で使われる時が多い、とお話ししました。
そういうわけで、単語の一部としてE/e が使われる際は、原則として「イー」と発音されず、「エ」と発音されることが非常に多いです。(他にもありますが、その話は別の機会に譲ります。)
単語の中でE/e は名前読みの「イー」とは異なり「エ」として”働く”ので「仕事読み」と言われたりします。
先ほど同様、憶える必要は全くありませんが、この先の記事内で仕事読み、という表現を使わせてもらいます。
例を挙げます。
“egg”(エッグ):卵
“end”(エンドゥ):終わり
二つの単語の”e”はすべて「エ」という「仕事読み」で発音されます。
名前読みだと”egg” は「イージージー」、”end”は「イーエヌディー」ですが、そのようには音読されない、ということです。
このようにアルファベット26文字には原則として読み方が文字の名称の通りの「名前読み」、単語の中で働く時に発音される「仕事読み」の2つが存在するのです。
ここまで目新しいことはない、基本ローマ字と同じやん!と思った方。
確かにおっしゃる通りのところもありますが、注意が必要な部分もあるので、この先ローマ字と明らかに異なるポイントをお話していきます。
ローマ字との違い
“sun”という単語を何と読みますか?
ローマ字読みでは「スン」。でも、「太陽」の意味ですよ~、と聞くと、「あ、『サン』だった!」と読み直したりするのです。
一方で「サン」という言葉をを耳にした時、”sun”とつづれるでしょうか。
どちらかというと、ローマ字に従って”san” とつづってしまうケースが多いように思います。
sun=「サン」はローマ字とフォニックスの大きな違いを示す典型的な例です。
なぜなら、カギとなる文字、“u”(ユー)のローマ字とフォニックスで読み方が異なるから!まとめると以下の通り。
- ローマ字の”u”:「ウ」と読む
- フォニックスの”u”:「ア」と読む
言われてみたら、「なるほど~」と思うかもしれません。
“a” にしても、英語の発音は、日本語の「ア」とはかなり異なるものです。
その他の母音(”a”, “e”, “i”, “o”, “u”)、それ以外の子音(22文字以上)にしても、ローマ字では表記しきれない発音がいくつもあります。
このようなフォニックスルールを繰り返し練習していくことで、発音とつづりの関係が定着していきますし、いつの間にかローマ字からも脱却が図れていきます。
フォニックスルールを学ぶメリットは、ローマ字から離れられることだけではありません。詳しく次に説明していきます。
フォニックスのメリット
はっきり言ってローマ字読みに慣れてしまうと、フォニックス読みに変えるのは決して容易なことではありません。
だから、よほどのメリットがないとやる気にならないよ!!と思うかもしれません。
はい、よほどのメリットがあるのです(笑)
- 発音がわかる:つづりから、発音が想像できる
- つづりがわかる:耳にした言葉から、つづりが想像できる
- つづりを憶えやすい:つづりの負担が減る
それぞれ以下に詳しくお話していきます。
つづりから、発音が想像できる
丁寧に言うと、知らない単語でも、そのつづりを目にして、正確な発音ができるのです。
pun:ダジャレ という単語を例にとります。この単語に遭遇したことがなく、意味を知らないと仮定します。
先ほど例に挙げた「太陽」: sun(=s+u+n) の”s” が “p”に入れ替わっただけ、と考えると発音の想像がつきますか?
そうです、「パン」と読みます。
意味が分からないので、話し相手の外国人に、”What is pun?”(「pun って何?」)と尋ねたいとします。
punを「パン」と正確に発音すれば、ほぼ正しい答えが返ってくるでしょう。
“pun”をローマ字読みすると「プン」。このように読んだら、相手には通じないままかもしれません。
ところで、このpun、「パン屋さん」の「パン」と全く同じ発音。
ところがあの食べるパンは、フランス語(pain)なんです!!英語ではbread (ブレッド)と言うので要注意!!(ややこしい例ですみません💦)
ここで英語のpun「ダジャレ」を一つご紹介。
“Let’s talk about it.”(それについて話し合おう。) の”talk about” が、早口で言うと、taco bout に聞こえるので、taco =”タコス”登場となるのです。
(※ bout =about と同じ意味。日常的に使われています。)
さて、フォニックスのメリットの一つ目は、初めて目にした単語でも、そのつづりから、発音が正確にできるというお話でしたが、実は初めて耳にした単語でも、正確なつづりができるよ、というお話に移ります。
耳にした言葉から、つづりが想像できる
フォニックスの二つ目のメリットは初めて遭遇する単語を耳にした時に、そのつづりが書ける力もつくのです。
pun(パン):ダジャレ
先ほどと同じ単語を例に、この単語に遭遇したことがなく、意味を知らないと仮定します。
That’s a bad pun. (それは悪いダジャレ(=オモロないギャク)だね。) と一人の人間のセリフを受けて、話の輪にいる人たちがみんな笑っている場面を想像しましょう。
「食べるパンのことではなさそうだし…」と、笑っている輪の中に入れずにモヤモヤ。
そこで携帯の辞書で検索。フォニックスを知っていれば、つづりが”p-u-n” だとすぐに見当がつき、携帯が正解を教えてくれる。
ほんの1分遅れくらいで状況把握ができ、何事もなかったかのように輪の中に戻れる!セーフ。
以上2つのメリットをお話ししましたが、自分にはあまり関係なさそうだな~という人もいるかもしれません。
次に筆記テストに深く関係する3つ目のフォニックスメリットをお話をしますね。
つづりを記憶する負担が減る
今までお話しした二つのメリット「発音がわかる」「つづりがわかる」の理解が進むと、多くの単語における共通項が見えてくるようになるんです。
そうすると、つづりの暗記にかける負担が激減するんです。
先の例でお話しすると、 s-u-n と p-u-n のようなもの。
先頭の1文字違うだけ(”s”と”p”)で他の2文字(”u”と”n”)は同じ発音だね!と共通項が見えるわけです。
この共通項を把握する時間が短くなればなるほど、全く知らない単語であっても、発音を耳にしたとき、つづりのイメージが浮かんで来るのです。
つまり、単語を一字ずつ暗記する必要がなくなります。
“sun” 以外の例を挙げます。
rain:雨
train(t+rain):電車
brain(b+rain):脳
意味はまるで異なりますが、つづりは1文字しか違わないし、実は発音もほぼ同じです。
「雨」”r-a-i-n” のつづりを1つ憶えれば、残りの二つはそんなに憶える負担がないことがお分かりかと思います。
フォニックスメリットのまとめ
以上、フォニックスには、子どもにも大人にも万人向けたメリットがあることがお分かりいただけたかと思います。
ローマ字読みをしてしまうクセが抜けない、あるいはその癖があるとすら自覚できない場合大人の方には特におすすめです。
ローマ字読みから脱却できた時、初めて見るpunというつづりの単語を見ても、正確に発音できればこそ、自信をもって質問できるのです。
答えも正確に返ってきます。ネイティブに臆することなく質問を繰り返し、返事をもらうというやり取りを積み重ねると、英語の相当な自信につながっていきます。
正しい英語の発音ができることで、相手からの信用度も上がる可能性が高く、それを感じられるとさらなる自信がつきます。
また、耳にした単語のつづりが合っているだけで、辞書を前にガッツポーズしたくなることは、私自身も日常茶飯事の出来事。
また英語を耳にして、何を言っているのかわからない!!と思っても、フォニックスをしっかり学習していると、耳にした言葉を大体つづれることは明確なので、英語を理解できない理由はそれ以外である、というがわかってきます。
例えば以下のような理由が考えられます。
- 相手の英語が速すぎて聞き取れない
- 単語・フレーズの意味自体が分からない
- 相手の使っている単語や発音が実は間違えていた
- 文化背景による内容なのでわからない
以上は、英語を聞き取れない、あるいは理解できない場合の多くの理由です。
1、2については、もっと遅く話すように依頼したり、具体的に意味を尋ねることで解決できます。
3.についは、実はネイティブでも言い間違い、発音間違いもするし、間違えた単語を使っていたりすることもあるので、聴いている私たちの問題ではありません。
4.については一つ一つ学んでいくしかありませんが、ここの理解に努めることにこそ語学学習の醍醐味があると私は考えます。
例えば、「2週間合宿でスマホもTVも見なかったら浦島太郎になったよ~」なんて会話の意味、日本に住んだことのない人、あるいは日本語がわからない人にとってはナゾですね。
浦島太郎って誰?スマホやTVを観なかったら自分も浦島太郎になるのか?辞書には載っていないし、不思議でしょうね。
でも、そのことを知ることで、日本文化に根差した単語(浦島太郎、竜宮城、玉手箱など)を理解できるし、それが何よりも面白いことだと思えてならないんですよね。
以上、フォニックスを学ぶメリットをお話ししましたが、知らない単語でも発音ができたり、つづれたりすることって、大きな自信につながっていくと思うんですよね。
逆にフォニックスを知らないと、これらのメリットを受けられないだけではありません。一つずつ見ていきます。
フォニックスを知らないと
フォニックスを知らないとどうなるのか?大きく3つです。
- 発音がわからない:つづりを見ただけでは正確に発音できない
- つづりがわからない:聞こえてきた音と、つづりが一致しない
- つづりの負担増:つづりを憶えるのに時間がかかる
先ほどのpun(パン):ダジャレの例に、どういうことが起きるのか、解説していきます。
1.発音がわからない
pun をローマ字読みすると、「プン」。
めっちゃわかる~!!としっくりくる人の方が多いと思います。
ところが、日本人以外に、”What is 「プン」?”と質問したところで、理解してもらえるはずもなく。
「私も(そんな単語)聞いたことない」と言われてしまうのがオチ。
あの人は言っていことがわからないことが多いから、コミュニケーションを最低限にしようかな…と思われてしまう可能性すらあります。
このように、コミュニケーションに影響する場合は、実は文法よりも発音の方が大事になるケースもあります。
特に英語のノンネイティブ同士で話すとき、文法は二の次であり、語彙力の方が遥かに大事になります。そしてこの語彙力が発揮されるのは、正しく発音でき、正しくつづれる場合において、なのです。
(ここでいう「正しく発音」とは、100%ネイティブ風、ということではありません。)
日本人同士だとかなり理解され、共感できるローマ字読みであっても、海外でそれを理解してもらえることは全くありません。
ローマ字読みの誤りは、問題をはらんでいるのですが、日本国内にいると意識する場面が極端に少ないので、発音の重要性が認識されにくいのだと個人的には考えています。
2.つづりがわからない
聞こえてきた音と、つづりが一致しないのは、ほとんどがローマ字読みが大きく影響しています。
先ほどと同じ設定punを使ったお話をします。繰り返しになってしまいますが、状況は以下の通り。
That’s a bad pun. (それは悪いダジャレ(=オモロないギャク)だね。) と一人の人間のセリフを受けて、話の輪にいる人たちがみんな笑っている場面を想像します。
この”bad pun”という音を耳にしたとき、「え?悪いパン??」と思う。日本人なら無理もありません。
「だからこそ、おかしい!!!」と携帯辞書で調べようと入力したつづりが、ローマ字から連想する”p-a-n”。
“p”-“a”-“n” (フライパン、鍋)←*ローマ字表記では正解
「え?悪いフライパン?」みんなは一体何に笑ってるの?!
意味は分からない、笑いの輪にも入れない、疎外感しか残らない。
根本的なフォニックスの解決から話は逸れますが、”pan”の音は聞こえていて、つづりがわからないだけなので、”How do you spell 「パン」?”(「パン」はどうやってつづるの?)と質問することで、この難局クリアすることも一つの手ではあります!
とはいえ、こういった場面を積み重ねると、外国語で話すことも聴くことも億劫になり、英語学習のモチベーションが上がらなくなるのも仕方ないですね。
つづりの負担増
つづりを憶えるのに、とても時間がかかることがデメリットの3つ目です。
試験につづりが欠かせない人にはかなり切実な問題でしょう。
中には、留学に関する〇万円もする検定試験には、リスニング問題でつづりを問うものもあります。
フォニックスを学ぶことで、耳にした単語からつづりを想像しやすくなるのですが、一方でローマ字に慣れてしまっている人にとっては、単語を憶えるのは一苦労です。
どういう苦労があるかというと、昔から定番のある英単語の記憶方法を例に話を進めていきます。
baseball(野球):ベイスバール
これを『バセバ 11』と憶えるのです。
baseba+ll と二つに分け、前半の”baseba”をローマ字読みして「バセバ」、後半の ll を数字の「11」と読むのです。
面白いことを考える人がいるものだし、確かにこれは記憶に定着するかも!とある意味感心します。
同じ攻略法で似たような単語を憶えるとします。
<baseが共通の単語>
basement(地下)は、すべてローマ字読みの『バセメント』と憶えることになります。
<ballが共通の単語>
tennis ball (テニスのボール)の場合は、tennis ba と llで分割し、ローマ字読み+数字の組み合わせ、『テンニスバ 11』と憶えるのでしょう。
でもそんなことしなくても共通の単語は同じ発音で、つづりも同じ。
basement :base + ment (後半のみつづりと発音を憶える)
tennis ball :tennis + ball (前半のみつづりと発音憶える)
とすればいいのです。
共通の発音を比較したものはそれぞれ以下の通りです。
音とつづりの関係の基礎をおぼえたら、共通した音がはほとんど同じつづりだと見当がつくので、憶える分量は激減します。
上述例で言えば、水色下線部のみ憶えればいいからです。
毎回毎回新しい単語に出会うたびに、本来の発音と異なるローマ字読みや、時には数字まで総動員して憶えていては、時間と労力がかかる一方で、正確な発音は習得できないとなると、非効率ですよね。
デメリットまとめ
以上のデメリットをまとめます。
- 発音がわからない:つづりを見ただけでは正確に発音できない
- つづりがわからない:聞こえてきた音と、つづりが一致しない
- つづりの負担増:つづりを憶えるのに時間がかかる
これまで述べた3つの要素が並べば、英語を好きになるのは難しいし、コンプレックスを抱えてしまうのも無理はありません。
誤解のないように強調しますが、「発音をネイティブ級にトレーニングしましょう」と言っているわけではありません。
端的に言うと、英語に対するお悩み解決法がフォニックスにあるかもしれませんよ、と言いたいのです。
英語に対して必要以上に自己嫌悪になったり、劣等感を覚える必要が全くないのですが、相当数いるのが現実です。
実は、もしフォニックスを知っていれば、あまり生産的ではないお悩みの解決の糸口になるのではないかと常々思っているのです。
じゃぁ、フォニックスを習得するのって、すぐにできるの?悩みの解決にはどれくらい時間がかかるものなの?と気になるところで、学習期間についてお話しします。
フォニックスの学習期間は?
一体どれくらい時間をかけたらフォニックスの学習は終わるのか、ローマ字から脱却した発音が定着するのか、知りたいですよね。
答えは「その人の英語学習経歴と期間によって異なる」です。
70歳までずっとカタカナの発音で来た人と、10歳で英語初心者とでは全くかかる時間が異なります。
でも、やることは一緒。
そういうわけで、場合に分けていくつか例を挙げます。
例①中学1年生:カタカナ読みが定着している
フォニックスの基礎学習:3ヶ月~半年
カタカナ読みのクセが抜けて定着するまで:半年~2年
小学校5~6年くらい英語に触れていますが、その頃に憶えたローマ字読みを取り除くことが、たった数年経っても中々難しい。
2年くらいかけるとフォニックスが完全に定着します。
中学生を例に話ましたが、実はカタカナ読みがいったん身に着いてしまっている場合、どの世代でもほとんど定着までの所要期間は同じになります。
例②英語の発音が比較的上手な学生~大人
フォニックスの基礎学習:3ヶ月~1年
カタカナ読みのクセが抜けて定着するまで:半年~3年
え?先ほどの中学生より時間がかかるの?
そうなんです。一見発音が上手な人というのは、日本人が苦手な、”l”, “r” の違いが言えるものの、スピードを落としてゆっくり発音してもらうと、実は怪しい、というケースも少なくないからです。
実は正確に発音出来ていないから、スピードを速めてその場を切り抜けようとします。
ごまかそう、と意図的に切り抜けようとしているわけではなく、おそらくそういうクセがついているのではないかと考えられます。
ただ、日本人が苦手な、”l”, “r” の違いが言えることは実は誇りに思うべきことです。
とはいえ、それで過信して、自分のクセと向き合わずに表面的にフォニックスを取り組むだけでは、定着までにかなりの月日を要することになります。
そういうわけで、実は一見上手な人の方がフォニックスの習得期間が長くなる場合もあるのです。
例③英語がほぼ初めての小学生
フォニックスの基礎学習:3ヶ月~9ヶ月
定着するまで:3ヶ月~1年
これはもう言うまでもありませんが、癖が全くないので、習得したものがそのまま定着するため、学習期間と定着期間がほぼ同じになります。
ただ、カタカナ(日本語)になっている単語を正確に発音するのに多少時間がかかるため、場合によっては1年半くらいと書かせてもらいました。
小学生低学年でもクセ付けされてしまっている単語例としては「ボール」「ブラック」「クラス」「ランチ」など。
日本語風にアレンジされて使われているので、英語の正確な発音定着までに数ヶ月以上はかかるのに無理もありません。
フォニックスで注意すべき大事なこと
フォニックス習得で注意していただきたいことは、3つ。
- 短期習得
- 学習内容
- 外国人講師
ここで特に気を付けていただきたいことは一つ目。
「〇〇週間で劇的変化!before after」という宣伝を場合によっては動画でも、よく見かけます。
確かに短期で上達したい気持ち、めちゃくちゃわかります。この人にできるのなら、自分にもできそう!そんな思いになるのも自然なことです。
確かに、切羽詰まっている状況では、教材や英文を限定し、それに特化して正確な発音と本当に基礎的なフォニックス理解を獲得することは可能です。
実は私も指導させていただいたことがあります。
短期で相当な努力を要しているし、それはそれで、頑張ったという事実には違いありません。
でもここにこそ注意が必要!!
その他の注意事項とともに、次に詳しく続けます。
短期習得
短期集中で猛烈に頑張って習得したことは素晴らしいですが、すぐに獲得したものは、すぐに忘れます。
試験の一夜漬けのようなものです。翌日の試験の答案に答えを書いた瞬間から忘れていく、みたいな(笑)
一度習得したものって未来永劫続くような気持になりますし、努力したならなおさらですが、それは勘違いです。
筋トレをして筋肉をつけることと全く同じことが言えます。
筋トレはちょっとずつでも長く続けることが大事で、しばらく休むとせっかくついた筋力が落ちてしまいますよね。
先ほど「私が指導させていただいた」生徒さんは、短期で見事までに上達したものの、その後2週間サボったところ、完全に元に戻ってしまいました。
そういうわけで以下の点について念頭に置いておきましょう。
- あくまでも一部の英文に関してのみできているだけ
短期でできることには限界があるので、実はこれは自然なことです。 - その後に取り組む初見の英文や、リスニング、英会話に対応・応用はできない
1とも多少関係しますが、例え同じ単語の英文に出合ったところで、単語の組み合わせが異なると読み方も変わってくるため、学習範囲や期間が少ないと触れられる英文の量も極端に少ないため、応用がききません。 - クセがもどってしまう
一度ついたクセをとるのは短期で行うのは相当に難しいことです。1年以上かけてじっくりとなおしていきたいのなら、長期戦で行くといいですよ。
以上の3つを念頭に、短期なりにできることを割り切って、できるだけ長期的に取り組めるようにシフトしていければいいですね。
学習内容
実はフォニックスの学習内容に関する誤解はかなり幅広く存在します。
- 子供向けで単調
- 意味が分かるようにならない
- テストに出ない
それぞれ解説していきます。
1.子供向けで単調
動画、書籍、CDと、子供向けのフォニックス教材が山ほどあることは確かですが、それは子どもに向いている学習内容だからではありません。
子ども向け教材を「作りやすい」要素があるからであって、内容が拙いから、ということでは決してありません。
学習される大人のみなさんは、たいてい「え~!そうなの!!」と新鮮な驚きを抱えつつ、熱心に取り組んでくださいます。
また、英単語の発音とつづり確認の繰り返しで単調、という内容も半分誤解です。
確かに似たような単語を読んで、発音する、という単調な作業を繰り返すと飽きる気持ちはわかります。
この作業こそがとても大事で、必須だとわかっていても、です。
ただ、小学校高学年~大人の場合は、子どもとは異なるアプローチする場合が多いはず。
恐らくですが、基礎的なフォニックスルール学習として単調な作業も取り入れつつ、実際の文章やリスニング教材を使った実践練習の方に重きを置いたアプローチをとっているお教室が多いと思うのです。
こうすることで、脳にも刺激が与えられるし、基礎学習での単調な作業とのつながり、その重要性も理解できるからです。
半分誤解という話は、総合的に英語力を向上させるためには単調な作業も必要であり、その繰り返しばかりしているわけではありません、ということなのです。
詳しくは別の機会でお話ししますが、フォニックスを子ども向けの単調な学習内容だと捉えるのは誤解があります。
ローマ字読みが先行してしまっている人にとっては、是非とも一度取り組まれてみてはいかがでしょうか。
2.意味が分かるようにならない
フォニックス学習が意味理解に直結するかというと、しません。
ただし、この記事内で書かせてもらっているように、知らない単語を見た時、発音ができれば誰かに口頭で質問できる、つづれれば辞書で調べることもできる、逆に知らない単語を耳にした時に、つづりが想像できる、といったことは、自分でできることを着実に増やしてくれるのです。
- pun という単語を始めてみた → 「パン」と正しく発音できる → 食べるパンでないことは明らか → 「パンって何?」と英語で質問ができる。
- pun という単語を初めて聞いた → 食べるパン出ないことは明らか → “p-u-n”とつづりがわかる → 辞書で意味を引ける。
このどちらの場合においても、答えに着実にたどり着くためのツールが増えるのです。
すぐに意味が分からないのなら、音声CD付きの単語帳を丸暗記した方が手っ取り早い、フォニックス学習は費用対効果がよくないと思うかもしれません。
確かにすぐに結果は欲しい場合もあります。でも、語学の習得や上達は即自的な結果を求めることに限界があります。
世の中がどれほど便利になっても、英語に限らずものごとの習得や上達に王道は絶対にないのです。
ドラえもんの「暗記パン」も消化されたら効き目がおわるんです(笑)
私は、この意味理解にたどり着くまでのツールが手に入ることの方が、単語帳の丸暗記学習より遥かにメリットがあると自信をもってお伝えします。
そのメリットとは、時間、労力、経済面において発揮されます。つまり暗記に要する
「時間が短くて済む」
「エネルギーが少なくて済む」
「(長い目で見ると)費用も少なくて済む」
ということなのです!
3.テストに出ない
確かにフォニックスはテストには出ません。
でも、これまでにお話してきているように、リスニング、つづり、そして正確な発音にそれぞれつながるため、リスニングテスト、英作文問題、面接試験と、それぞれの試験対策に必ず効果が表れます。
明日に迫るテストで10点あげるための学習法ではありません。
語学は長いことかけて習得していくものですから、明日の10点よりも、1年後の満点に近づくことの方が結果的にハッピーになると信じています。
テストに出ないから、切り捨てるのはモッタイナイ!
外国人講師
発音とつづりの関係を学ぶ学問なのだから、外国人講師に習ったらいいのね、と思われるかもしれません。
確かに英語教室の中には外国人講師がフォニックスのクラスを指導・担当しているケースも多いのですが、そこに問題があることに気づいたのです。
それは、1年以上受けている生徒のほとんどが、カタカナ発音から脱却もできなければ、正確なつづりにも至らないという状況です。
その原因は以下の通りです。
- 外国人講師は日本語の意味を伝えられない
- 外国人講師は日本語の発音を知らない
- 外国人講師はローマ字を知らない
1.日本語で意味を伝えられないと、学習者は単語の意味を理解しないまま発音練習をすることになります。この場合、単語の定着がしづらいし、引いては発音上達も時間がかかってしまいます。
2.日本語の発音の特徴を知らないと、日本人学習者が特に苦手とする発音や、類似の発音を把握できません。効率的、効果的指導にはつながりにくくなります。
3.日本人が小学校でローマ字を習うことを知らないため、多くの日本人がフォニックスルールから外れた発音をしてしまう理由がわかりません。そうなると、単純に訂正していくだけ、という非効率な指導となってしまいます。
ネイティブ講師も悩みながら一生懸命教えているという背景を知っているだけに、本音は残念です。
とはいえネイティブ講師に上述の3点を克服するように求めることは無理があります。
以上のことから、フォニックスこそ、母語(日本語)を話せる人が、母語(日本語)を解して教えた方が圧倒的に効率的で効果的だと考えています。
まとめ
以上をまとめます。
- フォニックスの概要:英語の文字と、英語の発音の関係を学ぶもの。文字と音の法則、名前読みと仕事読みがあること。
- フォニックスのメリット4つ:pun(ダジャレ)を例に、1.つづりから発音が想像できる 2.聞いた言葉のつづりの想像ができること、rain train を例に、3.つづりの負担が減ること、そしてそれらを総じて4.自信がつく
- フォニックスを知らないことによるデメリット3つ:メリットとは逆の内容を、pun(誤った読み方×プン)や、baseball (面白い記憶術:バセバ11)を例に説明
- フォニックスの学習期間:基礎的なルールは短期で済みますが、定着までには年単位かかること
- フォニックスの注意点3つ:1.短期習得できると勘違い 2.学習内容への誤解 3.自分で習得する場合
フォニックスって、面白そう。意外と奥深いメリットがたくさんあり、やりがいがありそう!と思っていただけるととても嬉しいです。
逆に日本語のフォニックス学習法って存在するのかな?なんて思います。
さて、今回は、英語のフォニックスとともに、発音の重要性の話をしましたが、英語学習者の中には英語を音声面を除いた知識面に関して面白いと、知的に捉えるケースもあります。
発音はめちゃくちゃ、リスニングもあまりできない、でも、難しい単語を憶えるのは得意、書くのも得意。知らない世界と、文を通してつながることが楽しい、という人もいるのです。
英語の楽しむには正しい発音が必須、というわけではないのです。
だから全員がフォニックスを絶対に学ばなければならない、と言っているわけではありません。
フォニックスって筋トレや柔軟運動に似ていると思うんです。
数日筋トレや柔軟したからと言って、すぐにサッカーや踊りがうまくなるわけではない。
長時間取り組むわけではないものの、面倒くさいし、楽しくない。
だからサボりたくなる。
でも、怠けるとその分だけ顕著にパフォーマンスが落ちるし、ケガもしやすくなる。
英語でケガをすることは幸いありません。でも、発音やつづりの間違いでコミュニケーションに支障を来すことはありうるのです。
フォニックスは、「読む、書く、聴く、話す」の4技能の上達に大きく貢献する上に、学習も効率的になる。
だから習得しておいた方が絶対にお得なのです。
世界には15億人も英語話者がいます。フォニックスをマスターして、15億人の誰かとつながりませんか?
この記事が英語学習のお役に立てれば何よりです。
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