「仕事のできる人」になりたいと思うことは自然なことですが、どのような人のことをいうのでしょうか。次々と色々な要素が浮かびますが「好きを仕事にしている人」はかなり大切な要素だと個人的には思っています。
誰しも気分や体調ムラがある中で、仕事は毎日取り組まざるを得ないものなので、好きでなければ仕事も日常も苦しいものになると思うんです。ただ、私が考える「好き」というのが一時的な欲求を満たすようなものとはちょっと異なると思っています。
私は英語教師をしています。人に教えることが大好きですが、他にも好きなことがいくつもあります。でも残念ながら仕事にはつながっていません。仕事になる「好き」とは、いつでも・とこでも取り組めて無償で続けられる、人間の本質に関わる種類の「好き」ではないでしょうか?
もしそれほど好きではない事を自分が続けていたら「仕事ができる人」には到底なれないかも…と思います。ここまで書きましたが「私は仕事の出来る人」です!というつもりは全くありません(笑)
「仕事ができる人」のもう一つの要素は、他者の気持ちを動かす「謙虚さ、無欲さ」を持ち合わせることだと思っています。これは先日スニーカーを買った際に気づいたのですが、その理由は店員さんの「謙虚で無欲」な物腰こそが靴購入へとつながったことにあります。同時に、その店員さんは趣味で「ジョギング」を続けていることも判明し、好きなことの延長に仕事があると仕事は日常生活ともつながりやすく、やはり「好き」も重要だった!と再確認することもできたのです。
靴の購入から「仕事ができる人とは?」を考えていくのでよければおつきあいください。
好みではないデザインの靴を買った経緯
普段使いのスニーカーが必要になり、アルファベットの並ぶ名称の靴屋さんに行きました。スニーカーに関しては全く素人の私。機能性の違いなどわかりません。以下の点ばかりが念頭にありました。
- カッコいい
- 軽い
- 靴擦れができない
決めきれない私にその店員さんは声をかけ、私の好みから見事に外れたスニーカーを薦めてくれました。「ジョギングはしない」「ウォーキングが主」と伝えているのに「足に負担がかからないからおすすめです」と繰り返されるばかり。
実は私は比較的健脚で電車1駅分、徒歩20分程度ならば電車に乗らずに歩くことはやぶさかではありません。時には走ることもあるので、自分の主張に多少の後ろめたさはありました。
店員さんによると、私の選んだデザイン性重視の靴は立ち仕事をする分には問題はないものの、長距離歩いたり短距離でも走ったりするのであれば足に負担がかかる靴なのだそう。履いてしばらく使わないないことには本質的に納得はできませんが、購入前にそんなことは無理です。店員さんの言葉を信じるしかなく、初めは半信半疑でした。
ところがしばらく会話を続けるうちに、同じ言葉を繰り返される割には実は柔らかい物腰で、私のリクエストに耳を傾けてくださるし、おすすめの靴を選ぼうとしない私を否定する素振りも不快感も全く見せないことに気づきました。次第にこの店員さんに従うのは悪くないのでは?と気持ちが固まっていきました。そして会計の時、店員さんがボソッとつぶやかれたのです。
「自分は陸上をやっていたので(足に負担の少ないこの靴をおすすめする)」と。
そこですかさず店員さんに尋ねました。「今でも走っていらっしゃいますか。」店員さんの返事は、「はい~。」とはにかみつつ答えてくれました。好きが仕事になっている!と判明し、まだ履いていないこの靴は間違いがない!と確信しました。
靴の履き心地から考えたこと
絶大な信頼を得た靴をはいて店を出ました。山あり谷ありの30分ほどの道中、その履き心地の良さに大満足だったことは言うまでもありません。足取りも自ずと軽快になるし、お天気にも恵まれ気分もますます良い。謙虚なあの店員さんのアドバイスは正しかった!!と確信しながら、ふと「謙虚」という言葉から、それについて語っていた大物プロデューサーの言葉を思い出しました。
この大物プロデューサーとは、スタジオジブリの鈴木プロデューサーのことです。個性的な仕事仲間に囲まれていることが容易に想像されるのですが、その人たちを取りまとめるだけでなく、大ヒットさせるための対外的な営業・宣伝活動もしてきたのですから「仕事ができる人」でないはずがありません。
その鈴木プロデューサーは3つのことを言っています。
- 仕事における自己承認欲求を完全否定
- 欲のないところに身を置くこと
- 謙虚な姿勢に徹することの重要性
あの店員さんはまさしくこの3つの通りの姿勢やった!と思い返されます。(良ければスタジオ・ジブリ鈴木プロデューサーのお話コチラをどうぞ。「ジブリ最強の二人〜鈴木敏夫と宮崎駿〜」)
店員さんが自分の都合を押し付けずに私のリクエストを聞いてくださったことは、謙虚で欲のない姿勢の表れで、購入のきっかけだったわけです。
無欲な姿勢と専門性
店員さんを無欲だと感じた場面があります。もし販売員としての売り上げ実績を優先すると、お店都合で在庫を解消したい靴や利益率の高い靴を売ることもできるはずです。私が購入したくつがお店都合の商品だった可能性もゼロではないのですが、それならば「お店のお薦め」と書かれたpopの靴を一つくらいおすすめしてもいいはずです。それなのにpop商品については一切触れなかったんです。
あの店員さん、鈴木プロデューサーに匹敵するほどの専門家かもしれないと素直に感心しました。
それから、ふと「餅は餅屋」という言葉まで思い浮かんできました。
『餅は餅屋のものがいちばん出来がよい。専門家は素人にはとうていかなわない質のよい仕事をするので、その分野の専門家に任せるのが良い』
コトバンク、デジタル大辞泉
大物プロデューサーも靴屋の店員さんも素晴らしい「餅屋」であり、お二人を見習おうと思いました。
気になる餅屋という言葉
ところで話は変わりますが、「英語屋」の私から面白い英語表現を紹介させてください。
「餅は餅屋」を英語に直すと以下のようになります。
- Better leave it to a specialist. =専門家に任せた方が良いよ
→ 表現そのままで面白みに欠けます。 - Set a thief to catch a thief. = 泥棒を捕まえたいなら、泥棒に任せよ
→ 餅を題材にしている日本と、泥棒を題材にする英語圏。
二つ目の泥棒をその道のプロとして扱うの??聞いたことないな~と思ってさらに調べるとこの英文、「蛇の道は蛇」の英訳にも該当することが判明。「餅は餅屋」の意味を正確に反映する英語は、一つ目の面白みに欠ける英文になるのです。
「棚から牡丹餅」など、餅系で物事を表現する日本語が意外と存在することに気づかされます。お餅は白くて食感も柔らかいので、堅いことを形容したい時に雰囲気を和らげてくれる良い働きをするなと思います。そんな日本語に誇りすら感じてしまいます!
蛇足ながら、いくら私が「仕事ができる人」になりたいと言っても、流石に泥棒としてその手腕を発揮する、というのは遠慮したい…。
まとめ
靴屋の話からジブリの鈴木プロデューサーが登場し、餅屋さんの話にまで紹介させてもらいました。
- 「仕事ができる人」は「好きを仕事にしている人」だと思っていること
→取り組みやすいし、情報も入りやすいかも! - 「好きを仕事にすること」のメリットを靴屋の店員さんから学んだこと
→自らジョギングしていることで靴の機能を実感・熟知でき、それが顧客対応に生かされる! - 「謙虚さ」も「仕事の出来る人」の要素であること
→目先の売り上げよりも、顧客の満足度、顧客目線に立つ姿勢こそが大事! - 雑談(餅は餅屋について)
→英語圏では「泥棒」がプロの代表?!食べ物表現が豊かな日本語に誇りに思う!
「仕事の出来る人」は「好きを仕事にしていて」「謙虚さ・無欲さ」を兼ね備えた人、ということに集約することができます。なぜならば、私はその後半年も経たないうちに、さらなる靴を買いに同じお店に足を運んだんですから!!
かくいう私自身「仕事ができる人」になりたーい!!でも、例えなれなくても、の店員さんの姿勢を思い返しながら日々仕事に取り組むことの方が大事なんちゃうかな、と思うようになりました。
みなさんはどのような「仕事のできる人」になりたいですか?仕事に関係あってもなくても、無欲になれるほど好きなことってありますか?
もしあれば、その「好き」気持ちを誰かの幸せにつなげて、「仕事のできる自分」につなげていきませんか?
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